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戸田恵子さん。

2012 - 07/16 [Mon] - 01:19

健康診断で身長を計る度、学生時代より1センチ以上背が伸びてることを思い知らされます。…誤差にしたって一センチは大きい。いいよもうのびなくて! ヒール履くと世の中の結構な割合の男性と目線が同じになるというのは、割と切ないことなのですよ。

それはともかく。
渋谷パルコ劇場に、『なにわバタフライ N.V』を観に行ってきました。N.Vはニューヴァージョンの略。三谷幸喜作・演出、戸田恵子さんの一人芝居です。とても良いお芝居でした。面白かったです。
というわけで、例によってネタバレいたしますよー。

ミヤコ蝶々さんをモチーフに、恋に生き、芸に生きた一人の女芸人を描いたお芝居です。劇場に入ると、舞台の上には何やら布で包まれた品々が。やがて開演時間になり、和服姿の戸田恵子さんが舞台上に現れます。このときの戸田さんは、何かの役に入っているわけではなく、「戸田恵子」として現れて挨拶し、そのまま前説へ。一人芝居にはどんなものがあるかとか、何しろ一人しか舞台にいないから大変だとか、色々話してくださいます。「お客さんはもっと大変ですよ、何しろ私しか観るものがないんですからね!」と客席を笑わせてくれる戸田さん。ええ、わかってますとも! 今日は、貴女を観に来たのです。
そして戸田さんは、おもむろに舞台上の荷物をほどき始めます。舞台装置の設営も、お一人でしなければならないのだそうです。ふろしきのような大きな布包みを解くと、中からは物入れや机、傘、腰掛けなどが現れます。ふろしきはそのまま大きく舞台上に広げ、芝居の場に。布の色はきれいなブルー。ミヤコ蝶々さんがお好きだった色だそうです。この布を四方に広げてマジックテープで固定するんですが、このとき戸田さんがお客さんに「どなたが手伝ってくれませんかねえ」と話しかける。と、客席で「はいっ」と手を挙げる男性が!「すみませんねえ、ちょっとここ押さえといてくれます? そう、あと二時間くらい。今日、最後までいらっしゃいますよね?」などと話しつつ、反対側の端を広げると、また客席に向かって「すみません、どなたかもう一人」。と、一番後ろの客席から「はいっ」と手が。「ああ、あんな、本当に一番後ろから。すみませんねえ」と、またお客さんに手伝ってもらって、布を広げ終わる戸田さん。作業が終わると、「これ、お駄賃代わりに。私がCMやってるうるおう酢です」とドリンクのボトルを渡していらっしゃいました(笑)。…ああ、私も端の方の席に座ってたら、ぜひぜひお手伝いに立候補したかった!
舞台装置の設営が終わると、ふいに照明が切り替わり、舞台上には何やらエフェクト音が。戸田さんがふっと視線を斜め前方に向けると、舞台の魔法のはじまりはじまり。見えないけれど、そこにはミヤコ蝶々さんが立っていらっしゃる。そして、これから彼女の人生を芝居で演じるという戸田さんに話しかけ、彼女が愛用していた大きなサングラスを渡す。今回の一人芝居では、原則、「戸田さんが全ての役を演じる」というのではなく、「戸田さんが見えない相手と会話して話を進める」という手法をとっているのですが、このシーンでは、戸田さんは客席に背を向ける形で、ミヤコ蝶々さんをご自身で演じていらっしゃいました。
サングラスを受け取った戸田さんが、いよいよ本格的に芝居に入る前に、青い布の外の椅子に大事にそれを置くのがとても印象的でした。ミヤコ蝶々さんに見守られてお芝居をしている、ということだったのだと思います。

私は漫才や芸人さんのことについてはあまり知らないもので、ミヤコ蝶々さんがどんな方だったのかも、実はよく知りません。テレビドラマでちらっと見たことがあるくらいでしょうか。彼女の人生を、三谷監督はテンポのいいセリフと展開で描き、戸田さんはとても魅力的に演じていらっしゃいました。戸田恵子さんは「魅力的」という言葉が本当によく似合う女優さんだと思います。子供の頃、「ゲゲゲの鬼太郎」や「キャッツ・アイ」を再放送の度に繰り返し見て育った人間としては、戸田さんの声はもはや血肉に溶けているのかもしれませんが、それにしても台詞が聞きやすい。発声がいいというのもありますが、気持ちがすごく伝わってくるのです。そして間の取り方が上手い。表情の変化も、7歳の子供から53歳の女まで、本当に生き生きと演じていらして、もう「戸田さんの芝居をまるまる2時間見ていられた」というだけで、ものすごい満足感。観に行ってよかったです。特に、夜汽車のシーンがよかったなあ…2番目の旦那さんの浮気を問い詰めて、「聞かせて。私のどこがあかんの」って言うシーン。あれは相当胸にきました。

お話が進むにつれて、舞台の上には幾つかのフレームが並びます。折り畳み式の額縁です。これはミヤコ蝶々さんの人生に関わった人々を表すものだったようで、彼女を芸の道に引き込んだ「お父ちゃん」、一座の一人で彼女の漫才の相方だったインテリの「兄やん」、初恋の相手「坊」、最初の結婚相手である噺家の「師匠」、2番目の結婚相手の「ぼくちゃん」。戸田さんはフレームに向かって話しかけ、彼らが彼女の人生から退場する度、青布の外にフレームを吊っていきました。
芝居のラストで、それらのフレームに光が当たり、さらに照明効果で舞台の床や壁に幾つものフレームが映し出されたところで、なぜか急に泣きそうになりました。
何でしょう、直接的な泣きどころとはちょっと違う場面だと思うんですよ。そういった意味では、先に挙げた夜汽車のシーンとか、2番目の旦那さんが死んじゃうときに病院に会いに行くシーンとかの方が、ずっと泣きどころだと思うんですが。でも、たぶん私が一番じんとなったのは、このラストのシーンです。帰りの電車の中で読んだパンフレットの中で、三谷監督が「これは自分の人生に関わって去って行った人たちへの鎮魂のドラマ」と仰っているのを読んで、ああそういうことか、と思いました。そりゃ泣きますよ!

普段の私を知っている人にはあまり信じてもらえないのですが、私は本当に芝居や映画や本ですぐ泣く人間でして(一体どんだけバリケードな人だと思われているのか!)。特に、お話が進むにつれて気づかぬうちにじわじわと自分の中で高まっていった感情が、終盤で形になった瞬間に弱い。なんというか、ぐわーっという感じに胸が一杯になるのです。でも、そういうのが一番好き(笑)。お話として一番好き。ええ、なんぼでも泣かされましょうとも! それがたぶん感動というものなのです。
いいじゃないですか感動。何かに心動かされるのって、とても良いことだと思うのですよ。だから私は芝居を観るのをやめられないし、本を読むのをやめられないし、書くのもやめられないのです。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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