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ふらーんけんしゅたーいん!

2017 - 02/23 [Thu] - 01:48

もうだいぶ時間が経ってしまいましたが、ミュージカル「フランケンシュタイン」を観ました。日生劇場にて。
もとは韓国のオリジナルミュージカル。その日本初演です。韓国ミュージカルの日本版というと、これまでにも「シャーロックホームズ」とか「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ」とか「ブラック・メリーポピンズ」を観たことがあったんですが(ブラメリはDVDですけど)、どれも楽曲が良くて素晴らしい出来だったので、今回もとても期待していました。しかもフランケンシュタイン役は中川晃教くんと柿澤勇人くんのWキャスト、怪物役は加藤和樹くんと小西遼生くんのWキャスト! 歌上手い&イケメンのWキャストですよ!! 組み合わせは問わないけどとにかく全員観たくて、でもスケジュールの関係で4人観ようと思ったら1日で昼夜公演観るしかなくてですね…はい、観ましたとも、昼夜「フランケンシュタイン」。どっぷり浸ってきましたとも作品世界に! 昼公演が中川くん&小西くんの組み合わせ、夜公演が柿澤くんと加藤くんの組み合わせでした。
で、これがまたすごーく良かったんですよー! 演出が板垣さんだったので、本気で「DVD化しないかなー!!」と叫びたくなったくらい。いやこれ映像に残そうよ!! ドラマティックな楽曲、主要キャスト全員が2役やるという大胆な構成、そして大変腐女子向けな耽美な雰囲気(笑)!! いやあの、先行予約特典の写真集からして原作とは似ても似つかない腐女子向けな雰囲気だったので、「あー、そーゆー感じで売るんだなー」と思ってたら、確かに全力でそっち方面だった! まあでも、そっち方面抜きにしても、大変私好みな作品で。せめてCD欲しいなー、大好き。再演したら絶対観る!
というわけで、感想です。ネタバレしますよー。

舞台は19世紀初頭。軍医のアンリ・デュプレは、敵兵の治療をしようとしたところを咎められ、処刑されそうになります。そこに現れたのがビクター・フランケンシュタイン、優秀な科学者である彼はアンリを助け、代わりにアンリに自分の研究を手伝うよう命じます。ビクターが行っていたのは死体の蘇生術、死んだ兵士の死体を蘇らせる実験を行っているというのです。けれど戦争はそれからすぐに終結し、ビクターはアンリと執事のルンゲを伴って故郷へ戻ることになりました。そこでもビクターは実験を続けようとしますが、死体がごろごろ転がっている戦場とは違い、新鮮な死体が手に入らず、実験は一向に進みません。じゃあ葬儀屋から新鮮な死体を手に入れればいいんじゃないかという話になったのですが、それがいけませんでした。金に目がくらんだ葬儀屋は、なんと自分で人を殺してビクターに差し出してきたのです。怒ったビクターは思わず傍にあった石で葬儀屋を殴り殺してしまいました。このままではビクターは人殺しとして裁かれることになります。が、そんなビクターをアンリはかばい、全ての罪をかぶって処刑されてしまいました。悲嘆に暮れたビクターは、アンリの首を処刑場から持ち帰り、己のこれまでの研究の全てを注ぎ込んで彼を蘇らせようとします。轟く雷鳴、恐ろしいほどの稲光に照らされた実験室の中、再び動き出したアンリ。けれどそれはもはやアンリではありませんでした。アンリの記憶を失い、ただの怪物となったその生き物は、ビクターに襲いかかり、ルンゲを噛み殺して逃走してしまうのでした。
そして三年後。ビクターは、幼馴染のジュリアと結婚し、平和な時を過ごしていたビクターの前に、再びあの怪物が姿を現します。言葉など喋れなかったはずの怪物は、かつてのアンリのような知性ある話し方をするようになっていました。が、その目は暗く燃え、ビクターを冷たく睨みつけたまま。怪物は、この三年の間に自分に何があったのかを語り始めます。自分がどれだけの悪意にさらされ、どれだけの裏切りにあってきたのかを。そして怪物は、ビクターから全てを奪い去るべく、恐ろしい復讐を始めるのでした……――。

いつも思うことですが、Wキャストって面白いですね。全然個性の違う役者さんが、全然違う役作りで、同じ役を演じてみせる。同じシーンなのに、伝わってくる感情にはどこか違いがあって。同じ日に立て続けに観たからか、今回は特にキャストによる違いが分かった気がします。
中川くんのビクターは、とても繊細で純粋。子供の頃から生命の神秘に魅せられて、それが神の領域とわかっていても手をのばしてしまう。だからアンリが死んだとき、迷わず彼を蘇らせることを選ぶ。なぜって、彼にはそのための機材も理論もあったから。対して、柿澤くんのビクターは、同じく繊細だけど頑なで、どこかが壊れてる感じがする。紙一重感があるんですよね、天才であるがゆえに狂気の領域に足を踏み入れちゃってるような。アンリが蘇ったときの両ビクターの反応が全然違ってたのがひどく印象的でした。中川ビクターはアンリが生き返ったことを純粋に喜んでいるように見えたんですが、柿澤ビクターはアンリが生き返った喜びよりも実験が成功したという歓喜に打ち震えてるような感じで、ちょっとイッちゃった感があった。どちらのビクターも、私は大好きでした。頭が良すぎて、他の子供とは違っていて、だからこそ孤独で、でも彼は彼なりにこの世界に良いものをもたらそうとしていたんじゃないかなと。死は無慈悲で、残された者にとってもひどく残酷な出来事。大事なものをただただ取り戻したい一心で、ビクターは死者を蘇らせようとしていたはず。彼のお母さん、ジュリアが大事にしていた仔犬、そして親友だったアンリ。誰一人きちんと戻ってくることはなかったけれど、それでも死を生に転化させようとした彼の望みは誰が望んだっておかしくないものだったはず。
それにしても中川くんは、観る度「天才だなこの人…」と思います。なんて素晴らしい声! 「偉大な生命創造の歴史が始まる」を彼が歌い上げたとき、客席が割れんばかりの拍手でいっぱいになって、後ろの方から「ホウホーウ!」って歓声があがりました。今まで私、「いやいやジャパニーズなんだから、『ホーウ!』とか『ブラボー!』とか声上げるのはちょっと…」と思ってたんですが、この瞬間は私も胸の中で「ホーウ!!」って叫んでた! 肌がびりびりするくらい、あの歌声で感動した! ホウホーウ!! 
で、柿澤くんの歌声もまた、素晴らしくて! あれだけ歌って、全く揺らがない! ぶれない!! まだ若いのになんて安定感!! 素晴らしく厚みのある声が、感情と共にどーんと真正面から攻めてくる。柿澤くんの声も大好き。うん、CD出そうよこのミュージカル!! アッキーの声もカッキーの声もずっと聴いていたい。
そんでもって、アッキーもカッキーも、二幕ではビクターだけでなく、怪物をえらい目に遭わせる闘技場の主人ジャックも演じてたわけですが、このジャックがまたビクターと全然違う役で。しかも2人とも役作りが違ってて。中川くんのジャックは、なんか可愛いんですよ。なんとなくまるっとちまっとした感じで。奥さんのエヴァとの関係も、なんかこう、きゃっきゃした感じで。なのに、そんな可愛い人が、ゴルフクラブで怪物の顔をがんがん殴るのが怖い。対して、柿澤くんのジャックは、だいぶお下品(笑)。下衆い!! そして怖い!! 全般的に、芝居は柿澤くんの方が遊び心満載なんですよね。小ネタをばんばん入れてくる感じで。しかも時折底冷えするような瞳をするものだから、尋常じゃなく怖い。私としては、ジャックの演技は柿澤くんの方が好みだったかも(笑)。
遊び心といえば、アドリブも中川くんと柿澤くんで結構違ってましたね。戦いで腕を失った敵将に腕をくっつけてやれと言ってきた将軍に向かってビクターが「質問ですか、それとも命令ですか?」と返した台詞を、その後ルンゲやアンリが真似するくだりがあるんですが、ルンゲが「質問ですか、それとも命令ですか」とビクターに向かって言ったとき、中川ビクターは無視して去っていくんですが、柿澤ビクターは「引っ叩かれたいんですか」と返してましたね(笑)。そしてそれに向かって「愛されたいんです!」と返すルンゲが最高でした(笑)。ルンゲの名案に喜んだビクターがルンゲにキスをするシーンでも、中川ビクターはちゅちゅちゅっと小鳥のようなキスを連続でしてたのに対し、柿澤ビクターはまさかのお酒口移し(笑)! そういえばこのシーンでは、小西アンリもルンゲにキスしてましたねえ、酒場の支払い押し付けたとき(笑)。加藤アンリは、ルンゲがそのとき遠くにいたもんだから微笑んだだけでしたけど。この辺は全部アドリブだったんでしょうね。

アンリ役Wキャストの小西くんと加藤くんも素敵でした。長身イケメンが露出度の高い格好をしてくれるのは、大変眼福ですね(笑)。でも、逃げ出した怪物が最低限の布を腰にまとっただけ+ビクターのコートという格好だったときは、「変態だ…」と思ってしまいました(笑)。冒頭、アンリが怪物となって甦るシーンでは、小西くんの痙攣っぷりがものすごくて、ちょっと怖かったです。痙攣しながら漏れる声が本当に人間のものとは思えないようなものになってて、すごかった! 
小西アンリは、ビクターの代わりに処刑される直前に歌う「君の夢の中で」がとても良かったです。この歌、アンリがビクターへの想いを歌う歌なんですが、ええと、歌詞の中にばっちり「君の夢見る瞳に恋をした」ってあるんですが…恋ですか、そうですか、恋…。まあそれはともかく、歌の盛り上がりのところを歌い上げた後、小西アンリが感極まったように一度口をつぐんだところで、ものすごく胸にくるものがありました。ああこの人はこれだけの想いをビクターに抱いていたからこそ、迷わず身代わりを買って出たのだなと。家族のいなかったアンリにとって、ビクターは親友であり、家族の代わりでもあり、そして共に夢を追いかける存在だったわけで。たとえ自分が死んでもビクターの夢の中で生き続けられるならかまわない、と歌うアンリの姿が健気で美しくて。でもアンリは、ビクターが自分を実験に使う可能性を考えてなかったのでしょうか。アンリくらい頭が良ければ、たぶんその可能性も考えていたはず。ビクターの役に立てるならいいというくらいに思っていたのでしょうね。まさか蘇った自分が全ての記憶を失って怪物と化すとは予想していなかったのでしょう。悲劇だなあ…。
加藤アンリは、怪物になった後、闘技場でカトリーヌと心を通わせるシーンがすごく好きでした。悪意渦巻く闇の闘技場で、唯一怪物と友達になってくれたカトリーヌ。けれどカトリーヌは自由になりたい一心で怪物を裏切り、彼の飲み水に毒を盛ってしまう。カトリーヌが差し出した水を受け取る怪物の、子供みたいにカトリーヌを信じ切った笑顔が胸に痛かった!! 二幕は怪物に感情移入しまくって観ていたもので、その後、カトリーヌの裏切りを知った怪物が、「昨夜初めて夢を見た、誰かに抱きしめられる夢」と歌うところなんてもう泣けて泣けて。可哀想すぎるよ怪物!! でも怪物、さすがもともとはアンリというか、いざ復讐始めるとものすごく知能犯…ステファンの死体の傍に気絶させたエレンとステファンの財産目録を置いてみたり、兵隊の一人に変装してみたり、ビクターから全てを奪うためとはいえ色々手口が巧妙すぎませんか(笑)。でも、知性を得た怪物がビクターの前に現れたときの冷たい瞳と立ち姿のかっこよさにはかなりくらくらしました。ああ、本当に、小西くんも加藤くんもいいキャスティングでしたよ。美しかった!

ビクターの婚約者のジュリアと闘技場のカトリーヌを演じた音月桂ちゃんは、生で観るのは「十二夜」以来二度目かな? 優しく美しいジュリアよりもカトリーヌの方が断然良かった(笑)。典型的な良い子ヒロインなジュリアに比べると、優しく愚かなカトリーヌは役柄的な美味しさもありますけどね。怪物と2人で「熊ー!」「熊、好きー?」ってやってるシーンが微笑ましかったなあ…だからこそ、カトリーヌが怪物に毒を盛るシーンや、その後の命乞いのシーンが辛かった。辛かったですよ本当に!
ビクターの姉のエレンと闇の闘技場の女主人エヴァを演じたのは濱田めぐみさん。こちらも、エヴァの方が断然私の好み(笑)。やっぱり濱田さんは、優しくたおやかな女性よりも、エヴァのような強い女性の方が似合う気が。エヴァが闘技場で歌うシーン、かっこよかったなあ! あの瞬間、劇場中が濱田さんの声で赤く染め上げられた気がしましたよ。でも、エレンが処刑された後、ビクターが子供時代を回想するシーンでのエレンにはすごく泣かされました。誰よりもビクターのことを愛してくれていたのが彼女だったんだなということがよくわかって、でも回想の中のエレンがあまりにも優しく美しいがゆえに、そんな彼女が永遠に失われたことが本当に悲しくて。
そして、ビクターの執事のルンゲと闘技場の…ええと、マスコットキャラ的なイゴールを演じた鈴木壮麻さん。ルンゲ楽しかったですねえ、ビクターに作ってあげる夕飯は毎回アドリブで変わってたのでしょうか。私が観たときは、少なくとも昼公演と夜公演で全然違うメニューを言ってました。ビクターの傍に長いこと仕えてるのに全然愛してもらえないと、アンリにビクターに気に入ってもらうための秘訣を尋ねるシーンが面白かったです。イゴールの方は…ええとあの、まずその姿形にびっくりでしたよ。壮麻さんの形してない! ていうか頭に何乗せてるの、マヨネーズ!? 中川ジャックの退場時に、ステッキにまたがったジャックがイゴールに「乗れ!」と言って、2人で魔法の箒よろしくステッキにまたがってぴょんぴょん去っていく姿がとても可愛かったです。公演プログラムの壮麻さんのページは見開きで笑えますね、素敵ジェントルマンのルンゲと、親指くわえて物思いに耽るイゴールが同時に見られます(笑)。

ああ本当にこれ、再演してほしいなあ! キャストはそのまま据え置きでも嬉しいし、新キャストで観てもこれなら面白そう。大好きなミュージカルがまた一つ増えました。観に行って良かったです。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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