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ジャージー・ボーイズ!

2016 - 07/16 [Sat] - 19:58

ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」を観ました。シアタークリエにて。トニー賞獲ったミュージカルの日本初演版です。イーストウッドがちょっと前に映画化もしてましたね(いや、映画版は観てないんですけど…イーストウッドの映画ってどうも苦手で…)。実はザ・フォー・シーズンズもフランキー・ヴァリもこの作品で初めて知ったんですけど、「君の瞳に恋してる」とか知ってる曲は幾つもあって、そんな曲が出てくる度にぐわっと気分が盛り上がりました。なんつーかこう、歌の力ってすごい。ミュージカルとしてもとてもよくできてて、面白かったです。観に行って良かった! ちなみに私が観たのはWHITEキャストでした。
というわけで、感想です。ネタバレしまーすよー。

実話に基づく物語です。彼らが出会ったのはニュージャージー州の片田舎。強盗なんて当たり前、回転ドアでもくぐるみたいに皆刑務所の扉を出たり入ったりしてる。フランキーはそんな街に住む純真な若者。けれど彼の声は世界一、まるで天使の歌声のような素晴らしいハイトーン。その声に惚れ込んだトミーは、フランキーを自分のグループのボーカルとして迎え入れます。トミーはならず者だけど面倒見がよく、同じグループのニックは酒浸りだけど優しい。3人は何度もグループ名を変え、残り1人のメンバーは何度も変わり、迷走の末に、才能ある作曲家のボブをメンバーに加えます。グループの名前は「ザ・フォー・シーズンズ」となり、レコード会社への売り込みと下積みを経て、彼らはついに名曲「シェリー」を発表! やがて人気絶頂となった彼らは、けれどそれで全てを手に入れたわけではありませんでした。一人の女をめぐってメンバー同士で争ったり、かつての馬鹿な行いのツケが今になってふりかかってきたり、トミーが莫大な借金をしていることが発覚したり…そうして、トミーが抜け、ニックが抜け、トミーの借金をグループで肩代わりしたフランキーとボブは2人だけで活動を続けます。フランキーのもとからは次々と人が去っていく、愛した家族も壊れていく、それでもフランキーは歌い続けるしかなかったのです……――。

フランキー役は中川晃教くん。観る前は、他の主要メンバーがWキャストなのにフランキーだけ何でシングルキャストなんだろうと思っていたのですが、うん、これしょうがない! この役、アッキーしかできない! 素晴らしいハイトーン! 喉大丈夫だろうかと心配になるくらいの高い音で見事に歌う中川くん、本当にすごかったです。アッキーの声は本当に光り輝いてるなあ。冒頭のまだなんにも知らないぽやぽやしたフランキーが、だんだん大人の男になっていく感じもすごかったです。
この舞台はトミー、ボブ、ニックと順々に語り手を変えていく形でザ・フォー・シーズンズがどのような道を歩んだかを語るんですが、最初あまりフランキーのキャラがつかめなかったんですよね。何しろ最初の語り手のトミーのキャラがやたら濃い上にすごく生き生きしてる。トミーが語るフランキーは何も知らない坊やで、グループのあれこれを回してるのはトミー。語り手がボブに移った後は、今度はボブのいかにも頭の良さそうな、作曲家だけでなくビジネスマンとしてもやっていけそうな様子に目がいく。ボブが語るフランキーは、歌の才能はあるけど、中身は普通の青年。あんまりフランキーとしてのキャラクターははっきりしないまま物語が進んでいくんですよ。ところが、トミーが多額の借金をしていることが発覚した後、フランキーが1人で街の顔役のデカルロのもとを訪れるあたりから、観てるこっちの気持ちがぐっとフランキーに寄る。ぽやぽやした坊やでもない、歌以外に特別なところなんてなさそうなただの青年でもない、目の前の現実を解決するために己の手札をきちんと見つめて勝負に出られる大人の男がそこにいました。そしてニックの語りを経て、ついにフランキーの語りのパートに入ると、なんかもう色々辛い! トミーの借金を返すためにはとにかくあちこちを歌って回らないと駄目で、そのために彼の家族は壊れていく。フランキーがお母さんについて語るシーンや、妻との諍いのシーン、そして娘とのシーンはかなり胸にきました。あああ、娘さーん…何でなんだようううう…。上手くいったままで続かないのが人生で、でもそれでもフランキーは歌い続けて、ヒットをとばして。アッキーが「君の瞳に恋してる」を歌い出しときは本当に、ぐわっと気持ちが盛り上がりました。本物のヒットソング、確かにそう。

トミー役は、中河内雅貴くん。舞台で観るのは初めてでした。トミー役、似合ってましたね。ろくでなしで、いつもぎらぎらした目をしてて、でも憎めなくて。彼のせいでザ・フォー・シーズンズは壊れたわけですが、彼がいなければそもそもはじまりもしなかったわけで。そんなトミーを、中河内くんがとても魅力的に演じてくれてました。ボブが入る前、グループの迷走ぶりがなかなか面白かったです(笑)。今の時代は四人組みじゃなきゃということで、色んな人を残り1人のメンバーに加えるんですが、コミックバンドを目指そうといって猿の物真似なんかもしたりして。超人気バンドでも昔はそんなこともあったのね(笑)。舞台のラストで、一人一人お別れの挨拶をするパートがあるんですが、トミーの語りは最後の最後まで魅力的でした。くすっと笑って終われる。本当にはまり役でしたね。
ボブ役は、海宝直人くん。ボブは、なんつーかこう、真っ直ぐな感じの青年でしたね。ろくでなし感漂うトミーやニックとは一線を画す感じの、真面目な人。ボブがいなければザ・フォー・シーズンズの成功はなくて、でもボブが入ったことでメンバーの関係性が変わってしまったのも確か。トミーが以前宿代を踏み倒したホテルにうっかり泊まっちゃったために全員ブタ箱に入れられてしまうシーンがあるんですが、そのときのおどおどびくびくしながら「俺は前科なしなんだよ!」とわめくボブが大変笑えました(笑)。アラジン役やってるだけあって、歌ものびやかでいいですね。そして正統派のハンサム。この先の活躍がとても楽しみな役者さんですね。
ニック役は、福井晶一さん。あーもー、いつ観ても本当にいい声ー!! 良く響く低音がたまらない。惚れ惚れしちゃいます。ニックはトミーに比べると穏やかで大人な感じの人で、口癖は「俺も自分のバンド作ろうかな」なんですが、トミー借金発覚事件直後にどかーんと爆発する。「俺が何で酒ばっか飲んでたと思う!? トミーと同室がやりきれなかったからだよ、こいつは部屋にあるタオルを全部使わないと気が済まないんだ!」とか「俺はもう家に帰りたいんだ、ホテルの小さすぎる石鹸はもう嫌なんだよ、あれでどうやって体を洗えっていうんだ!!」とか…観てるこちらとしては、「わあ、ニックが爆発した! したけど、台詞まともに聞いてると笑っちゃいそう!」な感じで。あー、ええと、うん、仰る通りなんですがー、そうね、タオルね、同室の人が全部使っちゃうの迷惑よね…ホテルの石鹸小さいのも嫌だよね…ええと、うん。でも、ニックの語りのパートは、福井さんの美声としみじみした内容から、それまでのトミーやボブの語りとは違ってなんかすごくしんみりしました。ずっと家に帰りたかったというニックの気持ちはわからなくもないです。トミーが抜けたのをきっかけにニックも抜けて、でもニックは自分のバンドを作ることはなく、フランキーが近くで歌うときだけ観に行って。こちらもはまり役でした。
他キャストで印象に残ったのは、やっぱりクルー役の太田基裕くん。端正なお顔とすらりとした長身が素敵なレコード会社の社長。でもオネエ(笑)。美味しいキャラでしたね。ちょっとした動きが綺麗でとても目を引きました。クルーはザ・フォー・シーズンズの味方に見えてそうでもなく、でも敵でもなく、ビジネスパートナーとしてはちょうど良かったのでしょうね。

e+貸切公演の日だったので、カーテンコールもちょっと長めでご挨拶もあり、なんだかとても得した気分。お客さんもノリノリで踊ってましたね。良いミュージカルでした。以前WOWOWで録画した「ジャージー・ボーイズ」、やっぱり観てみようかなあ…冒頭だけ見て「うーん、イーストウッドのにおいがぷんぷんする…」と思ってやめちゃったんだよなあ…なんかこう、イーストウッドの映画って、「映画ってのはこう撮るんだよォ!」とイーストウッドがずーっと脇でしかめっ面しながら言ってる感じがして、苦手なんですよ…。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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