瀬を渡り水の向こうへのナビゲーター   topページ > スポンサー広告> 観劇 > パッション。  

スポンサーサイト

-- - --/-- [--] - --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

パッション。

2015 - 11/08 [Sun] - 17:37

ミュージカル『パッション』を観てきました。新国立劇場にて。スティーブン・ソンドハイム作詞作曲。最初にパッションというタイトルだけ聞いたときは、キリストの受難の方かと思いましたが、そうではなく。イタリアを舞台に繰り広げられる愛と狂気の物語でした。役者さんは皆様素晴らしく歌が上手くて、複雑ながらも美しい楽曲は聴いているだけでも結構幸せでしたが、物語自体はなかなか展開の予想がつかず、どうなることやらと思っていたら…そうなったかー! うわー!!  
というわけで、感想です。ネタバレしますよー。

舞台は19世紀のイタリア。幕が開くと、そこにはベッドが一つ。騎兵隊の兵士ジョルジオとその恋人のクララが愛を交わしている真っ最中。「幸せだわ」「愛してる」そう言いあう2人。けれどジョルジオは第四国境警備隊への転属を命じられ、クララがいるミラノから辺鄙な田舎へと移ることになります。
転属先で待っていたのは、粗野な兵士達でした。ジョルジオを迎えての食事の席で、突然二階から女の悲鳴が響きます。ジョルジオは驚いて席を立ちますが、他の者たちは平然とした様子。「あれはリッチ大佐の従妹のフォスカお嬢さんだよ。また発作だ」フォスカはひどく病弱で、ヒステリー性の痙攣の発作をよく起こすとのこと。大佐はフォスカのことをとても気にかけているようでした。本が好きだというフォスカのために、ジョルジオは自分の本を何冊か貸してあげることにします。
ある日、一人で食堂にいたジョルジオの前に、フォスカが姿を現します。「本をありがとう」震える声で言いながら歩み寄ってくるフォスカは、病気のせいで痩せ細り、歪み、あまりに哀れであまりに惨め。まるで絶望そのもののような姿。以来、フォスカは何かというとジョルジオに近寄ってくるようになりました。そう、フォスカはジョルジオに異常なまでの執着を見せるようになっていったのです。食事の席では手紙を皿の下に置き、手にすがり、どこへ行こうとついてくる。病気な上に上官の従妹であるフォスカに対し、ジョルジオもあからさまに冷たい態度はとれません。仕方なく、ジョルジオはフォスカに対し、自分には恋人がいると伝えます。「なら、どうして早くその方と結婚なさらないの」と言うフォスカに、ジョルジオはこう答えました。「…彼女は、人妻なので」
クララをとても愛しているけれど、彼女と一緒になることはできない。そんなジョルジオに、フォスカはどこまでもつきまといます。なんとかフォスカから逃げようとするジョルジオですが、やがて彼女の狂気のような愛はジョルジオの心をも蝕んでいき……――。

ジョルジオを演じたのは、井上芳雄くん。クララ役の和音美桜さんとのベッドシーンから始まったもので、お二人の肌の白さに「おおっ」と思わず身を乗り出しそうになったのは私だけじゃないはずだ! 和音さん背中きれーい、脚きれーい、肌白ーい! そしてそれに負けないくらい井上くんも肌白ーい!(笑) そして2人ともさすがの美声。井上くんと和音さんのデュエットの美しいこと美しいこと。ジョルジオは兵隊さんなので軍服姿なんですが、井上くん軍服似合いますねー。そして、旅に出る際に羽織る袖なし外套が無茶苦茶かっこいい! 
フォスカを演じたシルビア・グラブさんは、もうとにかく怖い! この怖さはもう累ヶ淵とかに近いかもしれない…逃げられない怖さ。シルビアさんの演技が素晴らしすぎたんですよ、常に傾いた体、顎を胸につけんばかりにして上目遣いに相手を見る目つき、震える声(「みっかかああん…」と歌う声がいまだに耳に残ってます…)、メイクのせいで骸骨みたいに見える顔。ジョルジオがクララへの手紙に書いた通り、絶望そのものみたいな姿で、とにかく不吉。そんな女が、よろよろしながらどこまでもついてくるんですよ。冷たく突き放せば発作を起こして倒れるし、上官の従妹だから見捨てるわけにもいかないし。もう、観てる間ずっと「ジョルジオ逃げてー!! その女、意外と死なないから! そういう自分の病気をかさに着て『あたしもう死ぬから優しくして』的に寄ってくるストーカーは意外と丈夫だから!!」と思ってました私(笑)。でも、ジョルジオは紳士なので、彼女が手に怪我をしていれば手当てをせずにはいられない。発作を起こして倒れた彼女を置いてこうとしても、雨が降ってきたのに気づけば、やっぱり見捨てられずに戻ってしまう。優しくすればするだけフォスカは彼への執着を強めるだけなのに、どうしようもない。彼女を突き放すのは人として冷たい行為のように思えて、でも嫌なものは嫌で、このせめぎ合いというかどうしようもない感が、ものすごーくリアルでした。井上くんの「もーやだ、本当にやだ、この女気持ち悪い、逃げたい!」という芝居がリアルすぎて、観ていて辛くなるほど。しかも、上官でもある軍医がジョルジオに対して「お嬢さんは明日をも知れぬ身だから、寝室に行って元気づけてやってくれ」とか言うわけですよ。速攻で「嫌です!」と断るジョルジオに対し、ほとんどパワハラとしか思えん態度で「行け」という軍医。行ってみれば、フォスカは別に明日にも死ぬようには見えない感じで、ジョルジオに添い寝を迫るという(この添い寝シーンの、「あなたに寛いでほしいの」というフォスカに対して全然寛げない感じでベッドに横になる井上くんの演技がちょっと面白い)。
フォスカの気持ちもわからなくはないんですよ、過去にひどく男に裏切られた経験があって、それ以来病みついて、両親も失って。粗野な男ばかりいる辺鄙な田舎で絶望しながら暮らしてて、そんな中にいきなりジョルジオみたいな姿の良い上品な紳士が現れた日には、そりゃ好きにもなるでしょう。他の兵士がドラムならジョルジオはメロディのように思えるでしょう。でも、己の憐れさを前面に押し出してジョルジオに迫るそのやりくちはやっぱりどうにも気持ち悪く…そりゃあジョルジオも壊れるわなあ、と。
上官の言うことには逆らえず、フォスカを見捨てるわけにもいかず、愛するクララとは一緒になれないとわかっていて。八方塞がりのジョルジオ。でも、クララとの決別がはっきりした途端、「愛してるフォスカー!」とジョルジオが歌い出したときには、「おおい、どうしたのジョルジオ!?」と思いましたよ私! ジョルジオ戻ってきてー!! そしてなんやかんやで大佐と決闘することになり、あろうことが大佐を撃ってしまったジョルジオは、そのまま精神を崩壊させてしまうという…この瞬間のジョルジオの「あ――……!!」という叫びが心底恐ろしかったですよ。地を這うような絶望に満ちた、真っ黒な声。ホラー映画かと思った!

和音さんのクララは、とにかく美しく、とにかく愛らしく…そして、「女ってこうだよね」というくらい、ある意味冷静。なるようにしかならない現実と夢の境目をきちんと理解してましたね。女はいつだってリアリスティックにしか夢を見ない生き物なので、愛人に「一緒に逃げよう」と言われても、「それでどうやって暮らしていくのよ。それに、私にはまだ小さな子供がいるのよ」と答えるしかない。男はロマンティックな生き物なので、夢そのもののようなクララを失ったジョルジオは、フォスカの絶望に引き込まれるしかなかったのかなと。…いやでもジョルジオ、君なら人妻じゃなくて健康で気立てのいい可愛い娘さんをいくらでもつかまえられたはずなんだが…今からでもいいから、どこかその辺で普通の娘さんをゲットしてきなさいと言いたい。ジョルジオ、ある意味とても見る目がない。なさすぎる!
そして、この芝居の中で一番よくわからない人だった、佐山陽規さん演じる軍医! 嫌がるジョルジオを無理矢理フォスカとくっつけようとした割に、ジョルジオが本格的にフォスカの方に向かおうとすると止めようとするという…お前は何がしたかったんだ! この軍医の圧力がなければ、ジョルジオはああまで壊れなかったのでは…しかも、完全に壊れた彼が療養してちょっと回復してきた頃に、フォスカが死ぬ直前に書いた手紙とか送ってくるし…駄目だから、せっかく回復してきてるジョルジオにそんなの見せたら駄目だからー! 

とまあ、そんなわけで、誰も救われず、一向にすっきりしない物語ではあるんですが。でも楽曲は良かったし、役者さんの芝居も本当に素晴らしかったので、たぶん再演したらまた観に行っちゃうと思います。…うん、意外と気に入ってしまいましたよ。
で、私の観た回は、ぴあの貸切公演スペシャルデーでした。なので、スペシャルカーテンコールがありまして。井上くん、シルビアさん、和音さんがご挨拶で登場。「この舞台の中では何も浄化されず、すっきりしない」「この芝居観て『たっのしかったあっ♪』なんて言われても困るんですけど」と役者さんも仰ってましたよ(笑)。でも、スペシャルカーテンコールはとても楽しい雰囲気で。素の状態で明るく話しそうになったシルビアさんに井上くんが「あんまり役を離れない方が。演出家にも言われてるし」と止めるくらい。役に戻って「この公演も、あと『みっかかああん…』」と歌うシルビアさんが大変面白かったです(残り公演日が三日間だったようです)。
そしてスペシャルカーテンコール、このお三方だけではなく、第四国境警備隊の兵隊さん達から素晴らしい出し物までありました! スペシャルデーなので、入場するときにチラシ写真そのままのクリアファイルをもらえたんですが。
IMG_0243 (263x350)
なんとこの写真を、彼らが再現!! 「ぴあすぺしゃるでーい♪」とハモリながら、クララとフォスカを抱き寄せるジョルジオ、それを眺めるリッツ大佐、そして…ええと何ですかジョルジオ役の背後の、頭の後ろで両手を組んで悩ましげなセクシーポーズをとってるトラッソ中尉は!? 慌ててトラッソこと伊藤達人さんに駆け寄る井上くん、「待ってくださいこの人何ですか? おかしくないですか?」「いやあの…薔薇です」…おおう。背景の。…大輪すぎるよ!!

 | ホーム | 

プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

カウンター

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

リンク

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。