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トロイラスとクレシダ。

2015 - 08/01 [Sat] - 01:46

毎日暑いですね! 日本ってこんなに夏暑くなる国でしたっけ…近頃、冬はとことん寒く夏はとことん暑くといった感じになってきたような…。
それはともかく、「トロイラスとクレシダ」を観てきました。世田谷パブリックシアターにて。
シェークスピア作品ですが、上演されることが少ないそうで。愛し合う二人が引き裂かれるけれどロミジュリのように死んでしまう悲劇ではなく、笑える部分もあるけれど喜劇なわけでもなく、19世紀ごろから「問題劇」と呼ばれているのだそうです。確かに、ちょっと不思議な手触りのお話かもしれません。
というわけで感想です。ネタバレしますよー。

トロイ戦争を題材としたお芝居です。トロイ戦争といえば、ギリシャのメネレーアスの妻ヘレンがトロイの王子パリスに奪い去られたことから始まったアレですね。戦争が始まってからすでに七年。トロイ王の末っ子トロイラスは勿論王子なので率先して戦場に行くべき身なのですが、彼には戦争よりも大事なことがありました。何しろ彼の心は打ち砕かれてしまったのです。何に打ち砕かれたかといえば、恋に。「戦争なんか行きたくなーい!」と鎧をぶん投げるトロイラス。彼が恋した相手は、神官カルカスの娘クレシダでした。クレシダの叔父パンダラスの手引きでクレシダと結ばれたトロイラスは、彼女と永遠の愛を誓い合います。けれど、運命は残酷。翌朝には、クレシダは捕虜交換のためにトロイへと連れていかれることになったのです。別れの際、愛の証にと、自分の服の片袖を破って与えるトロイラス。涙ながらにそれを受け取るクレシダ。こうして若い恋人たちは引き裂かれ――ところがところが、後にトロイラスがギリシャ陣営を訪れた際に目撃したのは、ギリシャの将軍ダイアミディーズの愛人になっているとしか思えないクレシダの姿。「…あれはクレシダであってクレシダではない!」 こうして、恋によって一度砕かれたトロイラスの心は、その恋を失ったことによって完膚なきまでに粉々になり、ただひたすらに戦いへと駆り立てられていくのでした……――。

舞台が始まると、まず現れるのは小林勝也さん。この方も大好きな役者さんです。なんと、40年以上前に、トロイラス役をやったことがあるのだそうです。で、小林さんが序詞を述べるのですが…この序詞が面白い。「この芝居がお気に召すも召さないも、すべてお客様次第でございます」…ちょっとシェークスピア先生!? この芝居ウケないかもって自覚あったの!? ぶん投げたよ、芝居の冒頭で、なんかこう舞台としての責任的なものをまるっとぶん投げたよ! と思ってたら、直後に後方の階段上に現れたトロイラス王子が、今度は鎧をぶん投げたよ! 戦争行きたくないってぶん投げたよ!! あんた王族でしょ、戦うのが役目でしょー!?  という感じで、様々ぶん投げた状態でお話は始まります。
トロイラス役は浦井健治くん。ものすごく痩せましたね!!(←まずそこか) デスノートのミュージカルで7キロ痩せたそうですが、なんかもうすっかり素敵細マッチョに!! クレシダとのラブシーンで彼が脱いでる間はほぼ体しか見てなかった不届き者は私ですすみませんごめんなさい。「星ノ数ホド」のときも脱いでたけど、あのときは筋肉+脂肪で割とぼこぼこしたぶ厚い体だったのに…うーん、そんなに急に痩せて人間って大丈夫なのでしょうか。ライザップ的な何かを思えばOKなのでしょうか。
いやまあ、そんな筋肉談義はともかくとして、末っ子王子役が似合ってましたね! もうじき34歳になるというのに若い若い。なんかもう十代に見える(笑)。トロイラスはトロイの国で一番のイケメン的な設定で、ヘクターよりかっこいいそうで。うん、私もそれに異論は全くない!(笑) 一部編み込みにした髪型もかっこよかったです。それにしてもトロイラス、振れ幅の大きい役ですね。クレシダに恋してじたばたして、恋が実ってきゃっきゃしたかと思えば、もう別れのシーンになり、次にクレシダを見かけたときには戸惑いの末に激昂。そして殺戮マシーンと化して戦場へ。幼いとも見える前半に比べ、後半の彼の瞳のすさみっぷりはすごかったです。クレシダとのラブシーンは滅茶苦茶可愛かったですねー、初々しくて。あと、クレシダとダイアミディーズのラブシーン(と呼んでいいんですよねあれ)を陰から盗み見てじたばたしてる様が大変面白い(笑)。そして、殺陣のシーンが本当にかっこいい。新感線の舞台で使う軽い剣と違って、今回使用された剣は本当に鉄の棒だったらしく、剣を振る動きにはっきりとその重量が出てて、大迫力でした。あまりに大迫力すぎて、「役者の皆さん怪我だけはしないで!!」とちょっと本気で思いました。あれ、当たったら骨折れるそうです(笑)。円形劇場的なセットも素敵でしたが、あの階段の急角度ぶりは観ていてなんだかはらはら…私だったら絶対ずだだだーんと上から下まで落っこちるだろうなと。

クレシダ役はソニンちゃん。可愛いなあやっぱり!! ソニンちゃんも大好き!! 可愛くて、声が綺麗で、そして面白い(笑)。シェークスピアの台詞をあれだけ面白く言える女優さんも珍しいんじゃないかなと。クレシダのキャラ自体、かなり面白いんですよね。トロイラスのことが好きなのに、「いいえ、男は手に入ったものには興味を失くすから、簡単に手に入れられるような素振りを見せては駄目よ!」と自分に言い聞かせて、ツンデレ的なものを目指してるという(笑)。でも、実際にトロイラスと面と向かうと、あっという間に「あなたが好きです!」オーラが出て、テンパった末におかしな言動に走るとか。割と現代的なキャラにも見えたのは、演出の鵜山さんの味付けによるものなのか、ソニンちゃんのキャラによるのか、とにかく面白い。そして涙ながらにトロイラスと別れ、ギリシャに連れて行かれる可哀想なクレシダ。ギリシャの男達に取り囲まれ(いきなりハカを始めるんですよこいつら)、キス責めにされてしまうんですが、途中から機転を利かせて上手いこと男達から逃れていくのもいいですね。そして、トロイラスが覗き見するダイアミディーズとのシーン…ここ、本当に大笑いしたんですけど私! ダイアミディーズをじらしまくり、それで彼が立ち去ろうとすると必死に引き止め、彼から「愛の証が欲しい」と言われてクレシダが持ってきたのはなんとトロイラスにもらったあの片袖!! しかも、隠すでもなく、両手で広げて「うー、やだけど、渡したくないけど、仕方ないのー!」という表情で持ってくる! クレシダちゃーん、それ、やっちゃいけないことー!!(笑) ここのクレシダのじたばたぶりがとてつもなく可愛いんですが(そしてそれを覗き見しながらじたばたするトロイラスが面白いんですが)、本来ここってそんな大笑いするようなシーンなのでしょうか…もっとずるく、汚く見せることもできると思うんですけど、それをせずにおかしさとして見せるこのやり方が、私は結構好きでした。ちょっと前まで「あなたのこと忘れないわ!」的なことを言ってた女が、あっさり他の男に寝返る様を、愛らしく、おかしく、「しょうがねえなあ」という感じに見せてくれて。まあでも、男の方はどうかわかりませんが、私がクレシダの立場だったとして、敵国で身の保身をはかるためなら「まあこいつならいいかな」的な男を見つけた瞬間にありとあらゆる手練手管で相手を落とすような気もしますね(笑)。

今回、キャストの大部分が文学座の有名な役者さん達で。さすが、素晴らしい台詞回し! そして素晴らしい存在感でした。特にユリシーズ役の今井朋彦さんがすごい! 実は私、シェークスピアの回りくどくて難解な台詞がちょっと苦手なんですが、今井さんが語るとまあなんてするすると耳に入ってくることか! しかもやっぱり今井さんの芝居って面白い(笑)! 何かというとくっと持ち上がる唇の端、独特のリズムで動く体、いいなあ好きだなあこの役者さん。
アキリーズ(アキレス)役の横田栄司さんも素敵でした。というか、面白かった(笑)。ヤンキーなんですよアキリーズ(笑)。衣装は全般的に現代風だったんですが、アキリーズはパトロクロスと合わせてとにかく馬鹿なヤンキーで! 途中、えらい布面積の小さいお衣裳もお召しになったり(筋肉ウォッチャー的には残念なお体でしたすみません変なとこにばかり注目して)してましたが、もうとにかく笑える! 文学座の方なのにちょっと新感線っぽい! 面白いけど色気があって、いい声してて、存在感あって素敵。アキリーズはパトロクロスを殺されたことで戦場に戻り、ヘクターを殺すんですが、この殺し方はなかなかひどかったですね。一騎打ちじゃないんだー…鎧脱いで休もうとしてたヘクターを、手下のヤンキーと一緒に寄ってたかって嬲り殺すという。 
エージャックス役の桜井章喜さんも面白かったですね。一幕の最中に、客席降りするための階段を一部破損してましたが(笑)。「あっ」って言いましたよこの方、その瞬間! あと、エージャックスが持ってる槍だか鉄の棒だかが途中で微妙に曲がってるのはなぜだろうと思ってたら、途中で「ふぬーっ!」と曲げて見せるからなのですね! 毎回曲げてのばしてを繰り返してたら、そりゃあああなる(笑)。
あと、監督…じゃなくてアガメムノン役の鍜治直人さんがとても素敵でした! ギリシャの総指揮官なので偉いんですが、なぜか映画撮影現場で監督が座るディレクターズチェアに座る(笑)。しかも、移動するときはいちいち畳んで自分で持ち運ぶ! この方もとてもいい声をしていらして、立ち姿に華があって、素敵な役者さんだなと。私がクレシダだったら、ダイアミディーズじゃなくてアガメムノンを落とすかもしれない…だってダイアミディーズより偉いもの、アガメムノンの方が。

戦争が始まって七年も経ったところから始まって、戦争の終わりまでを描くことなく舞台は終わります。クレシダの愛を失い、兄ヘクターの命も奪われたトロイラスの行く先には破滅しかないように見え、トロイラスに突き放されたパンダラスは病にかかってぼろぼろよろよろの状態で観客を呪うような言葉を吐く。半端といえば半端な、でもなんだか印象的なラスト。序詞の「お気に召すも召さないも」の言葉の意味が、最後まで観るとわかるという。そりゃロミジュリやオセローみたいな圧倒的な何かはない。たぶん一般受けするような戯曲ではそもそもない。 だから上演もあまりされないのでしょう。でも、こうして感想を書いてみて、自分でそれを読み返してみると、私、「面白い」という言葉を何度も使ってますね。うん、観てる間、たくさん笑ったんですよ。役者さんも面白かったし、そもそものキャラクターも面白い。私は結構、お気に召したようですよこの舞台。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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