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デスノート!

2015 - 04/21 [Tue] - 00:21

日生劇場で上演中のミュージカル「デスノート」を観てきました。週刊少年ジャンプで連載されていたマンガの舞台ミュージカル化です。すでに実写映画があり、かなり丁寧に作られたアニメもあって、ついにミュージカル。実は、一番最初にこのミュージカル化のチラシを見たとき、「いやいやいや、無理でしょー(笑)」と思ったんですよ。だって、月が、Lが歌うの? ていうか死神どうするの? でも、演出される方のお名前を見たら栗山民也さんで、作曲はフランク・ワイルドホーンさんで。「ええっ、本気だ!」と驚いて。しかも上演する場所が日生劇場ってなってて、「おおお、ますます本気だ!!」と。で、そのうちにキャストが発表になったら、月役に浦井健治くんと柿澤勇人くんのWキャスト、リューク役に吉田鋼太郎さん、レム役に濱田めぐみさん、ミサミサが唯月ふうかちゃんでLが小池徹平くん! 「わあ、ホリプロが本気で全力でデスノートをミュージカルにしようとしてる!!」というわけで、この日米合作の新作ミュージカルがとても楽しみになりまして。デモ音源が出たり、楽曲披露の様子が動画で出たりする度、作り手側の本気度合いがますますこちらにも伝わってきて。
で、蓋をあけたら、これがまた大変出来の良いミュージカルだったわけですよ。役者さんは皆様素晴らしいし、ドラマティックな楽曲はよく耳に残るし! あの長い原作を二時間半に収めてるので、ディープな原作ファンの方からするとツッコミどころもあるとは思いますが、でも私はこのミュージカル、とても好きです。ていうか、近頃忙しくてブログ書く暇がなかったんですが、実は3回も観に行ってしまったんですよ…3回観ても全然飽きなかったし、ラストはやっぱり心臓がひりつくような感じを毎度覚えたんですよ。ちなみに最初は都心に季節外れの雪が降った日に柿澤くんの回を前から3列目どセンターで、2回めは浦井くんと徹平くんのトークショーの回を2階から、3回目は浦井大学の日に1階前列下手から観ました。うん、あっちからもこっちからも観られました(笑)。
というわけで3回分まとめて感想です。ネタバレしますよー。そして3回分だから長いですよ。

あらすじはもういいですよね? ある日死神のノートを手にした高校生が、新世界の神になろうとしてなれなかったお話です。
デスノートを手にした夜神月役のみ、Wキャストだったわけですが、また随分とタイプの違う役者さんでやるんだなーと。でも、2人とも大好きな役者さんだったので、本当に楽しみでした。先に柿澤くんの月を観たんですが、さすが柿澤くん、原作とも映画とも違う独自路線の月を作ってきましたねー! 柿澤くんの月と浦井くんの月を比べると、柿澤くんの方が「頭のいい優等生が、死神の力を手に入れたばっかりに異常犯罪者の本性を顕わにしていく」という色合いが濃いのかなと。柿澤くんの月、すごく怖かったんですよー…冷たい声を出すと本当に怖い人に見えますね、この人。最初の方は可愛らしいんです。初めてデスノートに名前を書いて、40秒経った瞬間にぎゅって目を閉じて身を縮める様とか、すごく可愛い。普通の子なんです。それが、どんどんどんどん犯罪者にしか見えなくなっていく。レムを追い詰めるシーンの、鉛筆でかつんかつん机を叩くシーンとか、もう無茶苦茶怖い。ラストのLとの対決のシーンも、もう自分の勝利を確信してるからずっと顔が笑ってて、今にも吹き出しそうなその笑い方がまたとても気持ち悪くて。で、リュークに殺されるシーンでは、ひたすらに見苦しく哀れで惨めで。今まで見たことのない月、でも月ってこういう人だったんだろうなと十分思わせる月。歌声も、声量がすごくて、そこに乗せられた感情がびりびりするくらい伝わってきて、素晴らしかったです。
で、浦井くんの月の方は、「高い理想を持っていた純粋な青年が、死神の力を手に入れたばっかりに闇に堕ちていく」という感じでしょうか。声に透明感があるからか、カッキーの月より浦井くんの方が純粋さが強く見える気が(笑)。浦井くんの月も、最初は可愛らしくて。冒頭の「法と正義について」のディベートシーンでの浦井くんの表情が、理想を持ちつつもそれを実現する術がない現実を知ってる子供に見えて、とても良かったです。で、そんな子が己の理想を実現する手段を手に入れて、初めて人を殺して、恐怖に震えながらも理想の世界のために犯罪者を殺していくことを決意する「デスノート」という楽曲がまた素晴らしい。背景に浮かび上がる無数の犯罪者の名前と、その前で辛そうな表情をしながらも「僕にしかできないことだ」と理想の世界を見つめる月。「やりぬこう」と前に手を差し伸べた月の視線の先に、鹿賀丈史さん演じる夜神パパがいるあの構図もいいですね。キラを犯罪者として捕まえようとする夜神パパと、キラとして人殺しをする決意を固める月の対比構造(またこのときの鹿賀さんの真っ直ぐな背中が惚れ惚れするくらいかっこいい…)。そして、浦井くんの月もどんどんダークサイドに落ちていく。カッキーの月はもともと異常犯罪者としての素質を持っていた人っぽい感じに見えたんですが、浦井くんの月は本当に「悪」に侵食された末の末路という感じで。しかもそれを、周りにもちょっとずつまき散らして感染させていくような怖さがある。一幕ラストの浦井くんの表情、本当にすごかったです。怖かった!!
夜神パパの歌に「人には越えてはならない一線がある」という歌詞があったんですが、たぶん月にとってはそれが、FBIの捜査官12人を殺したときだと思うのです。リンド・L・テイラーを殺したときはまだ、挑発されたがゆえの子供っぽい衝動だったのかもしれない。でも、FBIの方は完全な計画犯罪で、しかも犯罪者じゃない人達を自分のために殺してしまったわけで。そしてこのとき、常に離れた場所からニュースを通して人の死を見ていた月が、初めて相手の死を目の当たりにする。FBI捜査官が電車に飛び込んだときの哄笑のような表情、相手の死を感じた瞬間の完全に壊れたとしか思えない目の色が、「ああこいつもう絶対戻れない」という感じですごかったです。リュークに殺されるときの「やだ! やだやだやだ!! 死にたくないぃい…!!」という最期のあがきは、なんだか観ていて辛かったなあ…本当に、「末路」って言葉がよく似合う。

小池徹平くんのLは、実は観るまでは不安要素の一つでした。ミュージカルの経験はまだそれほどないはずだし、製作発表での楽曲披露も歌声がちょっと不安定で。でもビジュアルが公開されたときは「あ、Lだ」というくらい原作のLになっていて、お稽古場での楽曲披露の映像が出たときにはびっくりするくらい歌が上手くなっていて。で、幕が開いてみたら、もう完全にLがそこにいましたよ!! とってもLでしたよ!! あの姿、あの立ち方、あの座り方、あの携帯の持ち方!! 素晴らしい再現度合でした。歌も本当に、声量ばっちりで、難しい楽曲をあれだけ安定して歌えるなんて! これからもミュージカル何本もやってほしいと思ってしまいましたよ! しかしそれにしても、Wキャストの月に対して、Lはシングルキャストなわけで。あれだけタイプの違う月を相手に、よくまああれだけ安定したLでいられるなあと…本当に、お疲れ様です。浦井くんとのトークイベントで徹平くんが「2回公演の日に、こっちは最初の回が終わってぐったりしてるのに、月2人は『今日も一回やりきったな、お疲れー!!』って。俺はもう一回あんねんでって。しかもあれ、何で俺の隣のカッキーの楽屋でやるの!?」と言ってましたが(浦井くんが「ごっめん! 聞こえてた!?(笑)」と笑ってましたけど)、大変だと思うんですよやっぱり。でも本当に、徹平くんのL、素晴らしかったです。
月とLは何度か上手下手に分かれてデュエットしてたんですが、前から3列目で観てたときは大変でした…カッキー観たいから上手に目を向けて、でも徹平くんも観たいから下手も観なきゃで、ひたすら左右に首を振ってた気が(笑)。で、そういうときは大抵センターには鋼太郎さんのリュークがいるから、一瞬でも鋼太郎さんに目を向けるとそこに視線をもっていかれるという罠まであって(笑)。おかげで、椅子に座ったLの背後で月が両腕を広げながら歌うシーンでは、「おお、なんて収まりがいい!」と思いました(笑)。あそこもすごくかっこいいシーンですよね。
あと、テニスシーン! 私、テニミュは観たことがないんですが、こんな感じなのでしょうか。意外とちゃんとテニスしてるように見える! 浦井くんと徹平くんのトークイベントで「これ、作るの大変だった! 月とLだけじゃなく、背後のアンサンブルの動きも合わさって初めて、ボールのないテニスシーンが成り立つんです」と言ってましたが、確かにこれすごいですね。カッキーのキレのある身のこなしや、動く度にさらっさら揺れる浦井くんの髪に見惚れましたが、猫背姿勢を守りつつの徹平くんが一番すごかった気もします(笑)。あとこのシーン、月にタオル差し出した女の子が、汗ふいて返ってきたタオル握りしめて「うおおお夜神くんの汗吸ったタオルじゃあああ!」とばかりに嗅いだりもだえたりしてる様がとても面白い(笑)。

吉田鋼太郎さんは実は生で観るのは初めてだったんですが、もうねー…この人、ずるい。とにかくずるい。面白すぎるし上手すぎるし、歌えないって言ってたくせに歌まで上手いってどういうことですか!! 鋼太郎さんといえば「MOZU」で彼がやってた役が私は本当に大好きだったんですが、世の中的にはたぶん「花子とアン」の方なのでしょうね。今回のリューク役は、とにかく舞台に及ぼす影響力が巨大すぎました。初登場シーンからしてすごい。冒頭からずっと舞台の端にリンゴが置いてあるなあと思ったら、オケピの中からにゅるっとリューク登場!! リンゴをかじり、「つまんねぇええーっ! うぉおわあああーっ!」とライオンのように咆哮!! もう頭の中何もかも持っていかれた気分でしたよ! それにしても鋼太郎さん、舞台上で自由すぎる…3回観て、3回ともちょいちょい台詞替わってましたよ。最初に月に姿を見せるときなんて、3回目に観たときは挨拶がとうとう「よっ」ではなく「ちょりーす」になってましたよ。月にかまってもらえなくてじたばたするシーン、とうとう「え~~~~~ん」って泣いてましたよ。夜神パパにマント踏まれるシーンは、2回め観たときはちゃんと踏んでもらえなくて「次回はよろしく!」って言ってましたよ! トークイベントで浦井くんが「いや次回はないだろって思って、そこからずっと頭の中で次回、次回って言葉がぐるぐる回っちゃって顔が半分笑っちゃった」って言ってましたよ!! 柿澤月も浦井月も結構鋼太郎さんのアドリブで笑っちゃってましたよね。
退屈でしょうがなくてノートを人間界に落としたリューク。月という人間を見つけて、彼と警察やLとの駆け引きを存分に楽しんで、でも月がついに勝ってしまった瞬間、「飽きた」と言い出すリューク。せっかくの好敵手だったLはもういない。この先あるのはまたひたすらに、月がノートに名前を書いて、人が死ぬのを待つだけの日々。「最初の頃は楽しかったよなあ…でも、俺、もう飽きた」――あの瞬間、場に落ちる空気がすごかったですね。一瞬の空白、そして「やめろ」と叫びだす月。彼を一顧だにせずノートに月の名を書くリューク。名前を書き終わり、月がもがいて死ぬ様を、背を向けて待つその姿。月の死ぬ姿をリュークが見ないのは、今更そんなもの見たくないからなのか、それとも少しは情があったからなのか、どちらとも解釈できるような鋼太郎さんの表情が印象的でした。そして、死に絶えた月の懐に手を突っ込み、まるで月の心臓そのもののように真っ赤なリンゴを取り出して食むリューク。「何も残らない、何の意味もない、こういうのが一番つまんねえんだよなあ…」と静かに呟き去っていく彼の姿を見たとき、何かのインタビューで浦井くんが言っていた「これはリュークの物語とも言える」という言葉がとても腑に落ちました。

濱田めぐみさんのレムは、さすが日本一の歌姫!! 本当にこれ、CD欲しい!! ワイルドホーンさん、絶対濱田さんが歌うことを前提にこの歌作ったでしょうという感じでした。舌を真っ赤に塗り、黒い衣装をまとってコミカルに動くリュークとは対照的に、レムは白い衣装に青いメイクで、とても静かに動く感じ。まるで息してないかのように見えました。そんなレムが唯一俊敏に動いたのが、リュークがミサミサを自分のマントで包んだとき(笑)。べちっ!と音がするくらい思いっきりリュークの腕を引っ叩き、自分のマントでミサミサを包み直す様が微笑ましかったです。あ、ハチ公をそーっとなでようとしてたときも面白かったですね。レムはまるで母親のようにミサミサを愛し見守り、それがゆえに身を滅ぼしてしまう死神。切なかったなあ…砂になってもいいからミサを助けたいっていうあの歌。ホリプロさん、CD作ってください!!
唯月ふうかちゃんのミサミサは、本当に可愛かったですね。「ピーターパン」は観たことないのですが、去年の「アリス・イン・ワンダーランド」は観ました。そのときはとにかく「可愛いーっ!」という感じでしたが、ミサミサは狂気と純粋さが同居した役で、これがまたびっくりするくらい似合ってて。アニメキャラみたいな外見なのに、ふっとものすごく怖い目をするんですよ彼女。若いのに上手い。そして歌も本当に上手い。しかしふうかちゃん、小さいなあ…おかげで、Lに磔にされてるシーンがより犯罪ちっくな見た目に…これ、原作通りの拘束服じゃなくて本当に良かった! この十字架磔のミサミサが歌う歌が、またよく耳に残るんですよね。「あんたに寝返るくらいなら死んだ方がマシよ」っていう歌詞で、泣き声みたいな声で歌うのにちゃんと歌になってる。ふうかちゃん上手いなあ本当に。
月の妹役の前島亜美ちゃんも、可愛らしい声の方ですね。最初声優さんかと思った! ミサに比べるととても普通の女の子で、とにかくお兄ちゃんのことが大好きで。月がもう本当にどうしようもないところまで堕ちちゃったときに彼女が月の部屋に入ってくるシーンで、大好きなはずのお兄ちゃんの顔見た彼女がびくっとするのがすごく可哀想なんですよね。そしてラストシーンの、月の死体を見て泣き崩れる彼女がもう本当に痛々しい。このシーンは、夜神パパも辛いですね。最初妹ちゃんの方をしばらく見つめて、それからゆっくりと息子に視線を落とす様がもう。本当に辛い。
あと私、キラ捜査本部の刑事さん達が決意のほどを歌うシーンが、毎回うるっときたんですよ。キラの捜査をする以上、いつ死ぬかわからない。でも彼らにも家族がいて。息子が、年老いた母が、娘がいて。「俺が死んだら母は一人だ」「息子にはまだパパが必要」「娘よ、どうかわかってくれ」…これ、曲も勿論いいんですけど、刑事さん達の声が本当にいいんですよねえ…泣けます。CD作ってくださいホリプロさん。

このミュージカルは今後日本から海外に輸出していく形になるそうで。いずれブロードウェイでやるんでしょうけど、割と本気でそっちも観たい。デモ音源に声入れてたのが何しろブロードウェイのそうそうたるメンバーですからね! でも、たとえばアメリカの方が日本の高校生を演じるって、どんななんでしょうね…韓国の方ならまだわかるんですけどね。まあ、日本で月役やった2人だって、あの年でまだ十分高校生に見えましたからね! 浦井くんなんてもう33歳なのに! 原作のビジュアル再現度でいくと、浦井月とLとミサミサは本当に見事な再現度でした。
というかこれ…CDになりますよね? 日本版とブロードウェイ版、両方いずれ出ますよね? ホリプロさんお願いします!! なんならDVDでも良いのですよ!!

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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