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シェルブール。

2014 - 09/20 [Sat] - 22:25

先日、新宿で蚊に刺されました。近くにはデング熱騒ぎで一時閉鎖された某公園。ぎゃあ、やばい! …いやまあ、今年騒ぎになったってだけで、たぶん今までも普通にかかってる人いたんだと思うんですけどね…誰も調べなかっただけで。

それはともかく、『シェルブールの雨傘』を観てきました。シアタークリエにて。
あの有名映画の舞台ミュージカル版です。映画版はカトリーヌ・ドヌーヴがとにかく綺麗で可愛くて、衣装やセットがカラフルでお洒落で、でも何度も繰り返されるテーマ曲がひたすらもの悲しかったなと、そんな記憶があります。
で、今回のミュージカル版。初演のときは観ていないので私にとっては初めて観るものだったのですが、映画のあの世界を上手いことふくらませて、なんとも切ない舞台に仕立ててましたね。あと、ダンスシーンがすごく多い! 出てきた通行人が台詞もなくいきなり踊り出すタイプのミュージカルを久しぶりに観たもので、慣れるまでは「おおっ、踊るんだ…」といちいちどきっとしてしまいました(笑)。
というわけで、感想です。ネタバレしますよー。

フランスの港町シェルブールでのお話です。自動車整備工のギィと、傘屋を営むエムリー夫人の娘ジュヌヴィエーヴは、恋人同士。けれどある日、ギィのもとに召集令状が。激戦地アルジェリアへ兵役に行くことになってしまったのです。早くとも2年は帰れないだろうというギィ。悲嘆にくれるジュヌヴィエーヴに、二人の結婚にもともと反対だったエムリー夫人は「いつか時間が解決してくれるわ」と言い聞かせます。列車の駅で、「どんなに離れても君を愛している」とギィは誓い、涙ながらに二人は別れるのでした。
一方、エムリー夫人のもとへは多額の督促状が届きます。やむなく宝石を売りに行った先で出会ったのは、宝石商のカサール。カサールはジュヌヴィエーヴを一目で気に入り、お金持ちで紳士的なカサールのことをエムリー夫人も気に入ります。が、ジュヌヴィエーヴのお腹にはギィの子供が。ジュヌヴィエーヴは悩みます。ギィが無事に戻ってくるという保証はない。カサールは、ジュヌヴィエーヴの妊娠を知っても、かまわないと言ってくれた。このままカサールと結婚した方が幸せなのでは? 日に日に大きくなっていくお腹、それと共にふくらむ不安、「ギィ、今どこにいるの!?」叫んだところで、彼には決して届かなくて。
戦場で足を怪我したギィがようやくシェルブールに帰ってきたときには、すでにジュヌヴィエーヴはカサールと結婚して街を出ていました。落胆するギィ。生活もすさみ、整備工の仕事もやめてしまいました。その上、唯一の肉親である伯母さんまで亡くなってしまいます。ぼろぼろになったギィを支えたのは、ずっと伯母さんの世話をしてくれていたマドレーヌでした。
そして数年が過ぎ、ギィはかつて夢だったガソリンスタンドを経営しています。その横には、妻となったマドレーヌと可愛い息子。ある日のクリスマス、ガソリンスタンドに偶然現れた客は、あのジュヌヴィエーヴでした。二人はお互いに、お互いが幸せであることを確かめ、そして別れるのでした……。

映画版ではどう見てもジュヌヴィエーヴが主役でしたが、ミュージカル版ではどちらかというとギィが主役に見えますね。
ギィ役は井上芳雄くん。やっぱり脚長くてかっこいいなあこの人! 今回は、かなりのダンスシーンをこなしてましたね。最初の方の整備工ダンス、可愛かった! そして戦場のシーンでは、手榴弾に吹っ飛ばされるところでまさかの側転! 映画版では戦場のシーンはなかったんですが、ミュージカル版では結構戦地にいるギィの姿が描かれていて。負傷して倒れたギィが、もう立ち上がることもできないまま魂からの絶唱のように「たとえどんなに離れても君を愛してる」と歌うシーンがものすごく胸にきて、涙がだーっと出ました。しかもその後ろでは粛々とジュヌヴィエーヴの結婚式が執り行われてたりして。ああ切ない。あれは辛い。一幕ラストの二人の別れのシーンでも同じ歌が歌われてるんですけど、とにかく井上くんの歌がすごすぎて! 素晴らしい声量、見事な感情表現、聞いてるこちらの胸の中がぶるぶる震えるくらい感動的で! 大好きだなあ、この人。観る度どんどん好きになっていく役者さんです。ジュヌヴィエーヴの結婚を知って泣くシーンとか、荒れすさんでるシーンとかも、本当に上手い…そしてラストシーンの、雪の中でのあの表情。これでよかったんだ、とでもいうように、空を見上げて何度もうなずきながら、切ない笑顔を浮かべるあのシーン。いいですよねえ…ラストに歌がないところがまたなんとも。表情だけで全てを見せるという。
ジュヌヴィエーヴ役は野々すみ花さん。細い! 綺麗な方ですね。劇中の白いコート姿可愛かったなあ…。先日放送のNHKのスタジオパークで稽古の模様が紹介されてて、「歌の入りが苦手」ということで井上くんに色々アドバイスをもらってましたが(この、アドバイスしてる井上くんがまた優しくて…「前に進むように歌うといい」って、なんだか素敵な言葉でしたね)、その成果なのか歌もすごくよかったです。ジュヌヴィエーヴのきらきらした恋心とか不安とかがすごく声に出てて。ジュヌヴィエーヴは結局ギィではなくカサールを選んでしまうわけですが、その気持ちは分からなくもないです。妊娠してなければまた話は別だったと思うんですが、やっぱり不安でしょうがないでしょうし…お母さんのお店の経営状況だって決して良くはないようだったし…それに、鈴木綜馬さん演じるカサール、素敵だったんだもの! 大人の男で優しくてハンサムでしかもお金持ち! そりゃあ二十歳の自動車整備工が太刀打ちできる相手じゃあないです。しかし、鈴木綜馬さんを見ると、先日浦井健治くんが話してた「シラノ」の馬鹿貴族の話が浮かんでしまって…このとき鈴木さんと浦井くんは貴族の役だったので、舞台からはけてきて楽屋に帰るとき、普通は静かに帰って行くところを「僕ら、貴族だから! 馬に乗って帰ろう!」と、「ぱからっ、ぱからっ、ぱからっ、あははは、あははは~♪」と馬に乗る真似をしながら二人で楽屋に向かってたそうで…何でしょうその楽しすぎる舞台裏!! 鈴木さんおもしろすぎる! …いえいえ、カサールさんはそんなことなさいませんよ、本当に紳士でしたからね!

この物語、エムリー夫人の「時間が解決してくれるわ(時間だけが味方よ、だったかな?)」という言葉がまさに全てを物語っているというか。ジュヌヴィエーヴもギィも、あの駅で別れた後、それぞれの人生を生きて、それぞれの時間を過ごして、そうして失った初恋の痛みを乗り越えて大人になって。傍らにいるのは別の人になってしまったけれど、それでも今お互い幸せならいい。それでいい。そう思おう。そんなお話。素敵なミュージカルでした。
でもカーテンコールは、フランソワ役の子が全てさらっていきました(笑)。可愛かった、可愛かったですよ、あのほにゃんとした笑顔、ほにゃんとした動き!! 私が観た回は手塚涼大くんだったのかな? 4歳児のアピールが観客全員の目をさらっていくのが手に取るようにわかりました。ええい、卑怯なほどの可愛さ!
ところで、どうでもいいことですけど、ジュヌヴィエーヴって言いづらいですね…打つのもつらいけど。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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