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ひさしぶりに観劇はしご(その1)

2013 - 11/18 [Mon] - 01:26

たまーにやってしまう、観劇はしご。映画にしても舞台にしても、なるべくならはしごはせずに、じっくり一つずつ作品を楽しみたいとは思うのですが…日がかぶってるのに気づかずにチケット取ってしまうというポカを時々やらかします。まあ、時間がかぶってなかっただけマシかなと。
今回は、いのうえシェイクスピア「鉈切り丸」とこまつ座「イーハトーボの劇列車」をはしご。…あああ、よりにもよってどっちもじっくり味わいたい感じなのに…しかも方向性が真逆。共通点は、しいてあげればどちらも音楽に生演奏が入ってたことくらい…? でも、どちらもとても素晴らしく、観られて本当に良かったです。
とりあえず順番に感想を。まずは昼公演で観た「鉈切り丸」から。例によってネタバレいたしますよー。

源範頼。幼名は鉈切り丸。腹違いの兄に源頼朝、弟に義経を持つ男。征夷大将軍に上りつめようとする兄と、それを支える美しく強い弟に比べ、範頼は片足を引きずり、背中には大きな瘤を持ち、顔にはひどい痣がある身。けれどそんな彼にも、武器となるものがあった。知恵。頭脳。先を見通し、謀略をめぐらせ、己の思うままに周囲の人々を動かしていくだけの才覚。それは傍から見ればまるで悪魔の所業。だがそれがどうした、どうせ人並みの幸せなんてこんな己にあるはずもない。ならば悪の限りを楽しもう。兄と弟を争わせ、野望のままに上へ上へと突き進み、そうして何もかもを血の池に沈めてしまえ。醜く生まれた己には、その眺めこそ極楽の蓮池に等しいのだ!

シェイクスピアの「リチャード三世」を大胆にも日本の源平合戦の頃に置き換えたのが、この「鉈切り丸」。脚本は青木豪さん。以前、やっぱり青木さんがいのうえさんと組んでやった「港町純情オセロ」を観たことがありますが、これも「オセロ」の世界を日本のヤクザの世界に見事に置き換えてて、全然違うのにところどころちゃんとシェイクスピアしてて、うわあすごいと感動したのを覚えてます。
リチャード三世にあたる役所、源範頼役は、森田剛くん。ああ、いい役者になって…大河ドラマの「平清盛」に出てるのを見たときにもそう思いましたが、今回舞台で観たら、ちょっとびっくりするくらいの存在感。すごかったー。悪い役を魅力的に見せるというのは案外難しいことのように思うんですが、森田くん演じる範頼は、とにかくひどい奴なのにそれでも目を離せないくらいの魅力を放っていました。うわー。特に、範頼の思い通りに事が進んで、義経が自害したところで大きく腕を広げてみせるポーズ。あれは痺れた! この辺りのシーンは演出も面白くて、鎌倉にいる範頼と平泉にいる弁慶や義経を同じ空間に置いてるんですよね。追い詰められていく義経達の横に範頼は平然と立ち、呼びかけ、呪いの言葉を吐き、でも義経達には範頼の姿は見えていない。そして範頼の言葉のままに死んでいく義経達。何もかもが範頼の考えた台本通りだというこのシーン、とにかくかっこよかった! 空を舞う鳶に向かって範頼が呼びかけるシーンは、二階席から見てたのでなんだか目が合いそうでちょっとどきどきしました(笑)。
弟を殺し、兄を殺し、妻を殺し、非道の限りを尽くして征夷大将軍に上りつめる範頼。この世を血の池に変えた彼の最期は、己自身が血の池に落ちて終わり。舞台に水を張っての殺陣で、血飛沫で水たまりが血の池に変わる演出がすごい! そして範頼が死ぬ間際に鳶に向かって呼びかける言葉が非常に切ない。うーん、いいラストでした。

源頼朝役は、矢部…じゃなくて、ヅラ…じゃなくて、生瀬勝久さん。生瀬さん大好きなんですよー! またこの生瀬さん演じる頼朝が馬鹿なんです(笑)! もうとっても馬鹿! でも愛すべき馬鹿!! ああもうこの馬鹿ぶりがたまらない! 一挙手一投足の全てが愛おしい!! 義経の首実検のシーンの、一瞬だけ首桶開けて首は出さずにすぐに蓋閉めて「いいんだよ今ので十分わかったよ、あいつ小さかったからね、あいつ見るときは大体この角度だったからね、髷と眉と鼻先見ればあいつだってわかるよ!」とか「さっきは気づかなかったけど、今見たら義経の首が水につかってる! 義経がポニョになってる!!」とか、もう笑いすぎて死ぬかと…(笑)。でも、後の方の台詞で「頼朝には周りの人を引き付けるだけの華があった」というのがあるんですが、確かにそうなんですよね。馬鹿だけど、なんか周りから慕われるのがわかるという。これ意外と演じるのは難しいんじゃないかなと…さすが生瀬さんというべきなのでしょうか。悪い役もいい役も非常識な役も、どれやらせても自然にこなす役者さんですよね。ああたまらない。本当に大好きです。

頼朝に仕える梶原景時役は、渡辺いっけいさん。いっけいさんも大好きです。ドラマ観てても映画観てても、この人がいるとなんだか安心する(笑)。景時はそんなにギャグに走る役ではなく、むしろ真面目なキャラなんですが、頼朝と話しながら膝でにじり寄る際の動作が異様に大きくて、そういうところで笑わせてくれるのがさすがいっけいさんだなと。ラスト、範頼を討ち取るときの殺陣もかっこよかったです。
政子役の若村麻由美さんは、大変美しく、怖く、そして何より面白かったです(笑)。舞台で観るのは初めてだったんですが、こんなに面白いなんて! 頼朝を完全に尻に敷き、でもちゃんと頼朝のことを愛してる感じも出てて、素晴らしい。
義経役の須賀健太くんは、小さい頃から色んな作品で見てきましたけど、本当に大きく育ちましたね! そして義経役がよく似合ってました。これからは舞台にもちょいちょい出てくれると嬉しいなあ。巴役の成海璃子ちゃんは、とっても美しかったです。でも巴御前ならもう少し範頼に対してまともに歯向かってもいいんじゃないかと、少々思わなくもなかった感じ。いや、逆らえない理由があるのはわかるんですけどね。巴はそれはもうむごたらしく殺されてしまうんですが、殺されるときの悲鳴がものすごい…あれはちょっと怖かった! 建礼門院役の麻実れいさんは、もはや人ではなかった…本気で怖かった!

豪華キャストでいつもの新感線と同じく全力でエンターテイメントしつつ、あちこち重たく心に残る台詞もあったりして、本当に素晴らしいお芝居でした。これは絶対DVDになるでしょうから、そのときまたじっくり楽しもう。…そう思いつつ、シアターオーブを出て新宿サザンシアターに向かった私です。うう、やっぱり観劇はしご、慌ただしい…もうしない。しないように気をつける!! 

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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