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苗字はデビッド。

2013 - 10/15 [Tue] - 01:11

なんなのでしょうね、10月というのにこの暑さ。すっかり冬毛になってしまった猫が「あーつーいー」といわんばかりに日陰で寝てますよ! そろそろ気温も下がってくるようですが、この連休中は街行く人々の格好がばらばらすぎて愉快でした。半袖の人もいれば、もこもこなセーター着てる女子もいたりするという。

それはともかく、観てきましたNODA・MAP「MIWA」。うわあやっぱり野田さんのお芝居だあ、言葉の中に重ねられた意味が深い! 濃い! そして役者陣も濃い!(笑)
というわけで感想です。例によってネタバレしますよー思いっきり!

幕が開くと、そこは雲の上の世界。これからこの世に生れ出ようとしている魂達が、「最初の審判」により男女を振り分けられているところ。何をしているのかといえば、要は踏絵です。キャンバスに描かれた、いわゆる男性のシンボルを踏めるかどうかで男女を判断。踏む…というか、べりっと踏み抜くんですが、それができれば女。そのときの痛みが想像できてしまって踏めない奴は男というわけ。次々と男女に振り分けられていく行列の中、どう見ても女っぽいのにどうしても絵が踏めない者、MIWAが現れます。男にはなりたくない、でもアレは踏めない。「最初の審判」は、そんなMIWAに向かって「お前が男になりたくないなら、ここにとどめておく」と言います。なぜって、男でも女でもない生き物なんて化け物だから。化け物を世に出すわけにはいかないから。けれどそこへ、もう一人の化け物がやってきます。それこそアンドロギュヌス、男でも女でもある化け物でした。アンドロギュヌスに押され、共に地上に落ちていくMIWA。こうして男でも女でもないMIWAは、男でも女でもあるアンドロギュヌスと一つの体に生まれて暮らすことになるのです…。

MIWAといっても女性シンガーソングライターのmiwaさんのことではありません。美輪明宏さんの方です。美輪様です。これは、野田秀樹が、今地球上に生存する人間の中で一番面白いと思う人物を使って書いた、出鱈目の物語。「生きている他人の一生で遊ぶ」、そんな不遜で贅沢なお芝居なのです(公式HPの野田さんのお言葉より)。
MIWAを演じるのは宮沢りえさん。おお、美しい。美少女のごとき少年時代からその先まで、体当たりの演技でMIWAを演じてました。後半のちょっとチャイナっぽい青い衣装がすごく似合ってて綺麗。宮沢さんは勿論女性で胸もあるわけですが、女性である宮沢さんがMIWAを演じるからこそ、この芝居の中で描かれる同性愛がもっと普遍的な愛としての意味も持っていくのかなと思いました。
そして、宮沢さん演じるMIWAと二心同体で産まれてきたアンドロギュヌス(MIWAからは安藤牛乳と呼ばれてましたが…子供だったからアンドロギュヌスと言えなかったんだ…と思ってたら、さらに意味がありましたこの名前!)を演じるのは古田新太さん。古田さんは、現在の美輪様に非常に近い格好をされていました。真っ黄色の長い髪、ド派手な衣装。MIWAにしか見えない安藤牛乳は、時折MIWAの口を借りて勝手に外に向かって喋ってしまう。そして歌う! 「はあ~!」とMIWAとシンクロした動きで歌う! おおお、さすが古田さんいいお声!! そしてものすごい存在感!! この人が舞台にいると必ずそっちに目が行ってしまいますよ。

私は美輪様についてよくは知らないのですが、そういえば長崎のご出身でしたね。原爆、踏絵、そして同性愛。繰り返し物語の中に登場するそれらのモチーフは、けれど大半が上手いこと笑いの中にまぎれさせてあるため、観ているその最中にはそれほど生々しさを感じさせず、でも後で思い返すとふっと重たくのしかかる感じでした。原爆のシーンの演出はかなり怖かったですけどね…ビイイイイッと音を立てて裂ける紙の幕と、ゆっくり、本当に驚くほどゆっくり降りてくる、舞台を覆い尽くす大きな灰色の薄布。その下で蠢く黒い人々。印象に残るシーンが幾つもあるお芝居ですが、ここのシーンのショックはかなり忘れがたいものが。
忘れがたいといえば、MIWAが、野田さん演じるオスカワアイドル(ドリアングレイの肖像のような額縁付きの絵を背負ってる)に向かって『机の上』と『目の前』の違いについて説くシーンも忘れがたい。机の上で反乱を楽しむ人(つまりは物書き)と目の前で反乱しなくてはならない人の違い。それに対し、「『机の上』を妄想と呼び、『目の前』を現実と呼ぶのだ」と答えるオスカワアイドル。妄想と現実の対比というのも、このお芝居の中のテーマの一つのようでしたね。
母を失い、優しい継母を失い、その次の継母には疎まれ、原爆に焼かれた町を彷徨い、東京に行き、歌い、人を愛し、そして愛した人を何度も失うMIWA。本当に傍にいてほしいときにはいつもいない安藤牛乳。そして、本当にいなくなってしまう安藤牛乳。ラスト、「美輪さんて、生きていて辛いことなんてなかったでしょ?」と尋ねられて、「あるわけないでしょう」と微笑んで返すMIWAが切ない…そしてすごい。いなくなった安藤牛乳と同じ扮装で舞台に立ち、一人で歌うMIWAの姿が、今も目に焼き付いて離れませんよ。

他のキャストの方々も素晴らしかったです。MIWAが恋に落ちる相手として何度も登場する瑛太くん(役名は幼恋繋一郎、初恋繋一郎、赤絃繋一郎と変わっていって、全部別人なんですが)。この方も大好きな役者さん。最近だとテレビドラマの「最高の離婚」や「まほろ駅前多田便利軒」が大好きでした。舞台で観るのは今回が初めてだったんですが、やっぱり華がありますね! かっこいい。特に、スターである「赤絃繋一郎」のときは全身からスターのオーラが! 無茶苦茶やる気ない側転とかしてても、ぎらぎらとスターのオーラが出てるからかっこよく見える(笑)。やる役によって全く印象を変えられる役者さんですよね。ああ本当に好きですこの人!
小出恵介くん演じる通訳も面白かったです。アメリカヘーイ(アメリカ兵、なんですが…)の通訳として登場、その他の通訳も務める人。物語の境界線辺りに立ってる人のように思えるんですが、彼も同性愛者であり、MIWAが「君は自分のことは何一つその口で話せないんだね」と話しかけると黙り込む姿がものすごく印象に残りました。
井上真央さんが演じていたのは、マリア。雲の上のマリア様であり、MIWAの母であり、継母達であり、そして繋一郎の結婚相手や妹なども演じる。様々な「女性」を演じていたんですが、どれも大変良かったです。実は普段あまり好きな女優さんではなかったんですが(ごめんなさい)、舞台で観るとやっぱりすごく可愛いし、演技も堂々としていて。舞台経験ほとんどないと聞いていたんですが、もっと舞台で観たい方だと思いました。
青木さやかさんの負け女(なんというか、人生のあれこれで負けてはキューバやら満州やらに行ってしまう…)も面白かったです。この方も舞台向きな方ですよね。なんかこう、ばーんとした感じの存在感があって好きです。
池田成志さんは、MIWAの父親役になったり、MIWAがショウをやる店(MIWAの人生は、大半が舞台のショウとして劇中劇的に語られるのです)のオーナーを何人も兼ねたりと、非常に忙しい(笑)。この方も本当に面白い。大好きです。顔芸がものすごいことになってましたよ!
そして、ボーイ役の浦井健治くん。ちなみに苗字はデビッドだそうですよ(笑)。MIWAがショウをやる店のボーイだったり、MIWAの子供時代にお父さんのお店にいたボーイだったり。あと、シャンソンカフェ『倫巴里』の歌手の一人ギャルソンくんもやってましたね。幼いMIWAにあれこれと世間のことを教えていたシーンで、「僕は絵描きになるんだ」と言った直後に赤紙をもらうところが切なかった…ボーイくん、ずっと笑顔なんですが、軍服を着せられたところでふっとその笑顔が硬くなって。「これが僕の現実だ」も「戦争が終わったら帰ってくる」も、口調は明るいままなのが余計悲しい。ギャルソンくんは…まずはお衣裳にびっくり(笑)。ひらひらのフリルシャツで軽やかに踊ってたかと思ったら、いきなりズボン脱ぎ始めるからもうどーしようかと!! そして上はふりふりシャツのまま、下はセクシータイツだけという状態で踊る! わああ浦井くん脚きれいねお尻小さいね!…と思ってたら、あのシーンですよ。恐るべき家族愛の襲来ですよ。「男がスカートはいてぴらぴらぱらぱらするのが趣味なの?」と責めたてるギャルソンくんのおばーさま…ごめんなさいおばーさま、今のギャルソンくんはスカートすらはいてない! でも母親に「この子は子供の頃から気色が悪かった」と言われるシーンは痛かったなあ。「お母さん、僕、気色悪かったですか?」と問い返すシーンの浦井くんの表情がまたすごく切なくて…その切ない表情をよく見ていたいのに、下半身が気になってしょうがなかった私を誰か後ろから殴ってください(笑)。 いやあの、座ってた座席が結構前の方で、しかもそのときの浦井くんの立ち位置に割と近かったのです…あああ、ギャルソンくんごめんなさい!

まだ色々頭の中で整理できてない部分も多いんですが、とても素晴らしいお芝居でした。野田さんのお芝居は本当に言葉のセンスが良くて、今度は文字で味わってみたくて、観終わった後に「MIWA」の脚本が載ってる『新潮』を買ってしまいました。来月もう一度観に行く予定です。それまで野田さんの声は持つのかちょっと心配ですよ(笑)。古田さんが「いち早く野田さんが稽古で声を嗄らした」と仰ってたのを何かで読みましたが、本当に嗄れてた! 
しかしまあ、色んな意味で贅沢なお芝居ですよねこれ…DVDになったらぜひ欲しい。ぜひ。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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