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あわれ彼女は。

2016 - 06/27 [Mon] - 01:36

「あわれ彼女は娼婦」を観てきました。新国立劇場にて。ジョン・フォード作、エリザベス朝演劇末期の作品です。演出は栗山民也さん。重たかったー…でも、出てる人は皆様本当にお芝居の上手い方々ばかりで、演出も素晴らしくて、観に行ってよかったです。マリンバの生演奏も素敵でした。実は2回観たのですが、2回めの席がなんと前から2列目どセンター!! 近い! おかげで目の前で彼の断末魔をガン見することに(笑)。うわああ、ものすごい死にっぷりでしたー!!
というわけで、感想です。ネタバレしますよー。

中世のイタリアの都市、パルマが舞台の物語です。ジョヴァンニは、知性に優れた美しい青年。アナベラは、街中の男性が妻にと望むほどの愛らしい娘。ジョヴァンニはアナベラに恋い焦がれ、アナベラもまたジョヴァンニの姿を見て天使のようだと恋に落ちます。けれど2人は、血のつながった兄妹なのです。その愛は決して許されはしない、でも決して止められもしないほどに強くもあったのです。ついにジョヴァンニは短剣を手にアナベラに迫ります、「お前が愛してくれるか、僕が死ぬか、2つに1つだ」――そして、アナベラもまた、同じ気持ちだったのです。2人は愛を交わし、ひそかに恋人同士となってしまうのでした。
一方その頃、町ではとある陰謀が進んでいました。貴族のソランゾとの浮気が原因で夫を亡くすことになったヒポリタが、ソランゾを恨んで、ソランゾの従者であるヴァスケスと組んで復讐を果たそうとしていたのです。けれど、このソランゾを巡っては、もうひとつまた別の復讐計画が。実はヒポリタの夫リチャーデットは死んではおらず、医者に変装して町に戻ってきていたのです。ごみくずでも捨てるかのようにヒポリタを捨てたソランゾは、今ではアナベラに求婚中。リチャーデットは、同じくアナベラに求婚している兵士のグリマルディをたきつけて、ソランゾを殺そうとするのでした。けれど、グリマルディは誤って別の相手を殺してしまい、ヒポリタもまたソランゾに盛るはずだった毒を自ら飲む羽目になって絶命します。
こうしてパルマの町は徐々に血に染まっていきます。ジョヴァンニの子を腹に宿したアナベラがソランゾのもとへと嫁いだのが最後の引き金。あとは血みどろの破滅が待つばかり。狂った町にはやがて最悪の結末が訪れるのでした……――。

ジョヴァンニ役は浦井健治くん。なんつーかこう…美しかったです、はい。「ニーチェ先生」の松駒くんと同一人物はとても思えない。神々しいくらいの、怖いくらいの美しさ。研ぎ澄まされた狂気というのはこんなにも恐ろしくこんなにもある種の美をはらんだものとして表現できるのだなあと、観ててちょっと怖かったですね。ただひたすらにアナベラを愛し、神に救いを求めて何度も懺悔し、思い悩み、そしてとうとう「愛してもらえないなら死ぬ!」という結論に辿り着いてしまったジョヴァンニの思考回路はちょっと私には理解できなかったのですが(いや、だって絶対、神様だってそう思ったと思うんですよ、「懺悔して思い悩んでついに妹を愛していいという結論に至った!」ってジョヴァンニが言った瞬間に「おおいっ!」って盛大にツッコんだはずですよ)、彼がとにかくアナベラを愛してることはもう伝わりすぎるくらい伝わってきました。ていうかね、例の「事後」のシーンで、出かけてくるというジョヴァンニに向かってアナベラが「お帰りはいつ?」と尋ねて、ジョヴァンニがアナベラを後ろから抱きすくめて耳元で「すぐだ」と囁くアレ!! 何ですかあの色っぽさ、艶っぽさ!! わああ、今まで浦井くんがやってきた役の中で一番色気を感じた瞬間かもしれない…どきっとした! まあ、その前の、シャツはだけて裸足で舞台奥から進み出てきた瞬間からすでにえらく色っぽかったですけど!
アナベラの結婚式が血で汚されるのを見た父親の「こんな結婚はろくなことにはならないぞ」という台詞を受けて、ジョヴァンニが浮かべた表情もすごかったですね。夜神月を思い出させる邪悪さで。アナベラの結婚式辺りからジョヴァンニが加速度的に壊れてくのがもう怖い怖い。そしてとうとうアナベラを殺し、ソランゾのお誕生日パーティーに血まみれの姿で現れるシーンときたらもう!! 真っ赤なライトを背景に佇むジョヴァンニがまたとんでもなく美しく、とんでもなく狂ってて素晴らしかった!! 舞台奥から進み出てくる足取りがもうやばい。まともな人じゃなくなってましたね。しかも、短剣の先に何か刺さってるなーと思ったら、アナベラの心臓だった!! そしてそれを愛しげに握りしめ、頬ずりするジョヴァンニ。「ソランゾー!」といきなり吠えたかと思えば、ソランゾを実際に刺し殺すシーンでは恐ろしく静か。激昂するでもなく暴れるでもなく、すたすた近寄ってってそのままひどく自然な動作でソランゾを刺すのが怖すぎる。ヴァスケスに刺されて死ぬシーンでは、跳ね上がるように痙攣してもがく様が本当に苦しそうで…ばったり倒れて逆さまになった顔が怖くて怖くて。ていうか、持ち上げてた頭を浦井くんが床に落とした瞬間、「ごんっ」て結構いい音してたんですけど大丈夫ー!? シャルルやってたときに橋本じゅんさんに毎回床に頭落とされてたんこぶできたって言ってたけど、今回もできてないですかー!?(いや、この芝居観てる間は決して彼がシャルルだったときのことは思い出してはいけないんですが!)息を引き取ったジョヴァンニが、なんかもう可哀想なくらいぼろぼろに見えて、痛々しくて、しかも今回席が前列だったものだからそれがものすごい近い位置にあって、「うわーうわーうわー…!」という気持ちで倒れた彼を見つめ続けておりました。こんな大変な役を毎日やって、しかも合間にレコーディングやら取材やら次のお芝居の歌稽古やらやって、浦井くん大丈夫なんでしょうか…なんかあの、一回目観たときよりも、二回め観に行ったときの方がお顔がやつれてた気がしまして、日々げっそりしていってたらどうしようかと、ちょっと心配になるくらいでしたよ。

アナベラ役の蒼井優ちゃんも、本当に素晴らしかったです。よく考えたらシャルルとお銀が愛し合ってるんだなあと思わなくもないですが、新感線のときとは浦井くんも優ちゃんも全く別人(笑)。本当にねー、素晴らしい女優さんですよね! 冒頭のただひたすらに愛らしいアナベラと、「事後」のシーンのアナベラの変わりようがすごい。別に「はい、事後ですよー、この前にベッドシーンがあったんですよー」なんて説明は全くないのに(そんなのあったら嫌ですが)、アナベラがドレスの肩を落とした状態で舞台奥から現れて扉にもたれかかった瞬間、「あ、事後だ」とわかるんです。そのくらい、ものすごい色気が漂ってるんです。そして、少し戸惑ったような、儚げな、夢見るような表情でゆっくり進み出てくるアナベラの姿ときたらもう。後から現れるジョヴァンニと合わせて、なんかもう完璧なシーンですよねここ。そして、ただひたすら好きな人に愛される幸せを噛みしめるアナベラの可愛らしさ。妊娠したと悟り、懺悔する姿の哀れさ。誰より好きな兄の前でソランゾとの結婚を誓わなくてはならなくなったときの、あの迷子の子供みたいな顔。アナベラが処女ではないどころか妊娠していると悟ったソランゾに責められるシーンでは、冒頭の少女らしさは掻き消えて狡猾な「女」の顔さえ覗かせる。ジョヴァンニもどんどん壊れていきますが、アナベラの狂気もまた怖い。上手いなー優ちゃん…本当に、大好きな女優さんです。しかもハマり役でした。
そしてもう1人、私の心をがっちり捕らえたのが、ソランゾの従者ヴァスケス役の横田栄司さん! 「トロイラスとクレシダ」のアキリーズ役で観て以来、この方大好きなんです。家でテレビドラマ見てて横田さん出てくる度に「わーい横田さーん♡」と無条件に喜ぶくらい。こういう大人の男の色気漂う男性、大好き…特に声が素敵なんですよね。しかもヴァスケス、ものすごーく美味しい役で。ヒポリタと組んでソランゾに反逆するのかと思いきや、実はソランゾの味方。それどころか、これ以上ないくらい忠実な従者。主人のためならどんな汚いことでもやってのける、これぞ理想の従者!! そんなヴァスケス役を、横田さんが素晴らしい存在感と素晴らしい台詞回しで実に魅せるんですよ! もう、ヴァスケスが舞台に立ってるだけでついつい目が行く。ヴァスケスは客席に向かって語りかけるシーンも多くて、その度に私はひたすら彼を凝視してたんですが、何しろ前から二列目どセンターのお席だったもので、一度ばちーんと目が合ってしまいまして…その途端、「ひゃっ」と思ってものすごくびくーっとしてしまったんですが、横田さんの方でもつられたように一瞬「うおっ!?」という表情をされていて、なんだか申し訳なかったです。ああいうとき、他のお客様はどうなさっているのでしょう…いやでも本当に、ヴァスケス魅力的だったんですよ。目が合ったらそりゃびくっとしてしまいますよ、横田さん大好きですよ!

その他キャストの方々も皆様素晴らしくて。アナベラの求婚者の一人のはずがあっさり求婚者レースからはずれるお馬鹿なバーケットとその従者のポジオのコンビもよかったですね。バーゲットが舞台にいるだけでついつい笑ってしまいました。愛すべきお馬鹿、大好きでした。バーゲットが殺された後、誰もが尻込みした枢機卿の扉を無言で叩きに行くポジオもすごくよかったですね。バーゲットのおじさん役の春海四方さんもとても面白かったです。間の取り方とか台詞回しが上手いんですよねやっぱり。殺伐としたこの芝居の中で、バーゲット、ポジオ、ドナードのシーンだけはほっこりできる時間でした。
ヒポリタ役の宮菜穂子さんも素晴らしい存在感。結婚式のダンスのシーンも美しかったです。彼女の断末魔のシーンもすごかった!! アナベラの乳母のプターナ役の西尾まりさんも、いつ観ても素晴らしい。面白くて存在感あって大好きです。プターナがアナベラに対して「女がどーしてもって気分になったときには父親だろうが兄だろうが関係ありません!」とたきつけたときには「おいっ!?」と思いましたが、やっぱ妊娠は駄目なんですね…いやいや、そもそもそーゆーことしちゃいかんって。

観終わるとものすごーく重たい気分になるお芝居ですが、うん、私このお芝居好きです。しかし本当に、役者の皆様お疲れ様でした! すごい芝居だった!!

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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