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乱鶯!

2016 - 03/21 [Mon] - 17:59

劇団☆新感線春興行「乱鶯」を観てきました。新橋演舞場にて。一階席花道横の席だったので、役者さんが花道を駆け抜ける度に風圧を感じました(笑)。
いのうえ歌舞伎《黒》BLACKと銘打った、ちょっぴり大人向けのビターな味わいとの触れ込みでしたが、確かに渋くてかっこよかった! でもあちこち笑わせてくれるのはいつもの新感線(笑)。新感線の舞台を観るといつも、「これぞ正しいエンターテイメントだなあ」と思います。魅力的なキャラクターにテンポのいいセリフ運び、笑いも涙も感動も全てがここにあるという感じの物語。今回は特にラストシーンが印象的でした。「うわあ、ここで終わるんだ!」と、ちょっと鳥肌立ちましたよ。
というわけで、感想です。ネタバレしますよー。

時代劇です。江戸日本橋の呉服屋での大捕り物のシーンから始まります。呉服屋に盗みに入った盗賊たちを、次々と斬り捨てていく奉行所の同心たち。そこへ飛び込んできたのは、盗賊たちの頭である鶯の十三郎。多勢に無勢の中、それでも相手を切り伏せていく十三郎でしたが、仲間の裏切りにあって追い詰められ、体中に傷を負いながら逃げ延びます。瀕死の重傷の十三郎を拾ったのは、小橋貞右衛門という武士でした。貞右衛門は十三郎の正体を知った上で、彼を鶴田屋という居酒屋に預けます。貞右衛門は、十三郎を追い詰めた北町奉行所与力の黒部源四郎がやっている悪事を知っていました。金を払う悪党は見逃し、金を払わぬならば皆殺し。十三郎は黒部の要求をはねのけたからこそ、部下を皆殺しにされてしまったのです。貞右衛門は十三郎に向かって、すっぱり足を洗ってカタギとして生きるよう諭すのでした。
そして七年の時が流れ、十三郎は源三郎と名を変えて、鶴田屋で腕のいい板前として働いていました。鶴田屋の亭主だった勘助は肺の病で亡くなり、鶴田屋を切り盛りしているのはおかみのお加代。上手い料理を出すと繁盛している鶴田屋に、ある日、一人の若侍が現れます。無駄に堂々とした態度の若侍は、名を小橋勝之助といいました。そう、かつて十三郎を助けた貞右衛門の息子です。御先手組組頭である彼は、極悪非道の盗賊「火縄の砂吉」を追っているとのこと。貞右衛門への恩返しのために勝之助の役に立ちたいと思う源三郎に、ある日なんと火縄の砂吉本人が近づいてきました。かつて源三郎も狙っていた丹下屋という呉服屋の図面がほしいというのです。源三郎は砂吉に協力するふりをして、丹下屋に砂吉が押し込む日時を聞き出そうとします。しかし、源三郎が丹下屋に奉公に出ると聞いた勝之助が、「砂吉の引き込み役を突き止めるために、私もお前の弟子として丹下屋に入る!」と言い出したものだから、ことは厄介な方向へ。暴走しがちな勝之助を諌めつつ、丹下屋の信頼も得つつ、砂吉にも取り入って…と大忙しな源三郎。その上、源三郎が丹下屋と鶴田屋を掛け持ちすることになったものだから、お加代は寂しそう。悪事ばかりの世の中で、義理人情に色恋絡んで、さてさて一体どうなるのでしょう……――?

新感線の感想書く度毎回書いてる気がしますが、舞台で観る古田新太さんは本当に色っぽいですね! これぞ男の色気! 奔放な自由人かつ無敵な五右衛門と違って、今回の十三郎は、義理人情に生きる男。五右衛門よりももっと生身な感じのする男。自分を助けてくれた貞右衛門や、その後面倒を見てくれた勘助とお加代に、ひたすらに恩返しするために生きてる人。いい感じに力の抜けた台詞回しや絶妙な間の取り方はいつもの古田さんでしたけどね。自分はただの料理人ですよという顔をしながら、周りで立ち回りが始まるとあっさり相手をのしてしまうところとか、面白いけどかっこよかったです。やっぱり大好きだなあ、古田さん。
十三郎がなぜ鶯と呼ばれているかといえば、丸一年かけて準備をして、春になって鶯が鳴く頃になると盗みを働くから。この準備というのがなかなかすごくて、盗む先の店に入り込んで勝手に隠し階段とか隠し扉とか作っちゃうという(笑)。いやでも、それって一体どうやるの…他にも従業員たくさんいるのに、さすがにそんな家屋をいじるっていうのはどうなんですか! うっかり他の人がそこに手をついた瞬間、ぐるりんと壁が回ったりしたら大騒ぎですよ。
鶴田屋のおかみ、お加代を演じたのは稲森いずみさん。ちゃきちゃきした感じの、いかにも江戸でお店やってるおかみさんという感じ。心根が真っ直ぐで、すごく素敵な女性でした。亭主の勘助を亡くした後、ずっと店を支えてくれた源三郎のことを好きになって、でも自分からはっきりとは言い出せなくて憎まれ口を叩いたりして、そんな様がとても可愛い。源三郎の素性を知っている分、彼が危ないことに巻き込まれないか、無事に帰ってくるだろうかと心配でたまらないお加代。丹下屋に奉公に出た源三郎のところへ自分で魚を届けに行くシーンとかも、本音がほの見えて可愛らしかったですね。そして、丹下屋の店先に飾ってある着物に見惚れるお加代に、「あんたが着た方が似合うよ。そうだ、今ちょうどこの店では泥棒騒ぎが持ち上がってるから、どさくさにまぎれて持ってっちゃえ」と実に気安く言ってのける源三郎が面白い。この辺りは彼がもともと盗賊だという設定が強く出てるのでしょうね。すべて片付いた後、源三郎はこの着物をお加代に本当にあげてしまうのですが(本人は買ったようなことを言ってるけど、あの時点で丹下屋はもうなくなってるわけだから、絶対勝手に持ってきたんだと思う…)、この白い着物を着たお加代が本当に美しくて! なんかもう光り輝くようでしたよ。
源三郎が手助けする勝之助を演じたのは、大東駿介くん。いやー、馬鹿だった!(笑) 新感線の芝居でイケメン枠はお馬鹿寄りになることが多い気がしますが、今回のイケメン枠も、シャルルやアンドリュー宝田と張るくらいのお馬鹿さんだった!! 「盗賊を探してるんだけど、誰か知らないか?」と大声で店の中で尋ねたり、身分を隠して丹下屋に下働きに入ってるのに無駄に堂々としたままだったり。本人も自分が無駄に堂々としてる自覚はあるらしく、「この立ち方がいけないのだろうか!」とふんぞり返った姿勢のまま言ったりしてるんですが、それならもうちょっと改めてみてはどうだろうか!(笑) この丹下屋潜入のシーンでの源三郎と勝之助のやりとりはとにかく面白かったですね。勝之助は源三郎の弟子として丹下屋に入ってるので、周りの人が見てる前では源三郎は勝之助を叱らなくてはいけなくて、でも二人きりになると源三郎はものすごく腰を低くするという(笑)。しかも勝之助は本当にお馬鹿さんなので、ものすごく突飛な推理ばかりするもんだから、いちいち源三郎はそれにツッコまなくちゃいけない。忙しそうだったなあ、この辺りの古田さん(笑)。 とはいえ、勝之助も気持ちはとても真っ直ぐな若者。火縄の砂吉が一日早く丹下屋に押し込み、勝之助がたった一人で砂吉の手下達と戦うシーンは、ものすごく引き込まれました。決して華麗じゃない、強そうにも見えない、ただ真っ直ぐでただ必死な立ち回り。丹下屋で唯一勝之助を気にかけてくれた可愛らしい女中のおりつを守るため、ぼろぼろになりながら戦って、ついには死んでしまう勝之助。実は私、彼が死ぬとは全く思っていなかったもので、このシーンがかなりショックでした。うわあ、なんだかんだで生き残ると思ってたのにー…彼に取りすがって泣き叫ぶおりつの姿が痛ましかったです。そんなおりつに向かって、「礼を言ってやんな。命がけであんたを守ったんだ」と言う源三郎の姿も悲しかった。ビターだ。ビターな味わいだ。
おりつ役の清水くるみちゃんは、以前ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」で観て以来でしたが、やっぱり可愛かったですね。勝之助に取りすがって泣く姿が、ちょっとジュリエットとだぶりました。私、てっきりおりつが死んで、勝之助が生き残ると思ってたからなー…恋した少女の死を経て青年が大人になるんだと思ってたら、逆だったよ! まあ、好きな女を守って死ぬ男というのもそれはそれで王道なんですが。

火縄の砂吉役、橋本じゅんさんは、今回はとことん悪い役でしたね。女の人を助けるふりして女郎屋に売り飛ばしたり、押し込み先では誰も彼も皆殺しにしたり。丹下屋の図面が欲しかったのも、効率よく盗みを働くためではなく、効率よく殺してしまうため。甘党だったり、着てる着物がカラフルでぱっと見は人当たりがよかったりするんですが、もうとにかく中身は極悪人。こういう役をやるときのじゅんさんは、腹の中に底知れない闇を抱えてる感じがしてものすごく怖いですね。笑顔がとにかく怖い。
高田聖子さんは一幕目で出番がなかったので「あれ?」と思ってたら、二幕から丹下屋のおかみさんのお幸役で登場。これまたきっぷのいい、かっこいい女性でした。旦那を完全に尻に敷いてる辺りの芝居がとても面白かったです。丹下屋への押し込みのシーンでお幸さんが刺された辺りで、「あ、この芝居、もしや大量に人を殺すつもりか」と気づきました。実際、ものすごい数死にましたね。聖子さんの死ぬ演技がまた、ものすごく苦しそうなんですよね…死の間際まで自分の店の従業員を気にするところがまたなんとも悲しい。
勘助を演じた粟根まことさんは、なんというか、ずるい役でしたね!(笑) 勘助は冒頭にちょっと出てきて、げほごほ咳き込んだ末にあっという間に亡くなった扱いになってしまうんですが、まさかの幽霊役で再登場! どろどろどろーっと奈落から出てくる歌舞伎調の演出もありました。源三郎にだけ姿が見えるという設定で、楽しそうに動き回ってましたね。全身青白く塗ってあるものだから、カーテンコールで一人だけものすごく浮いてました(笑)。

丹下屋騒動の後、お加代に着物を贈り、舟遊びへと送り出す源三郎。今夜は両国で花火が上がるという。店の客たちはこぞって駆け出し、お加代も源三郎を誘うけれど、源三郎は「昔のなじみが来るもんで」と断るばかり。「次は必ず!」という源三郎のいっそすがすがしい笑顔と、「次はないよ」と憎まれ口を叩くお加代のやりとりに、なんとなく死亡フラグっぽいものを感じてはいたのですが…源三郎一人だけになった鶴田屋に黒部がやってくるところはやっぱり胸にずしんとくるものがありました。対峙する二人の男、一面上がる花火、轟音と共に舞い散る火花に埋め尽くされたラストの光景は、今でも目に焼き付いて離れません。なんて素晴らしいラストシーン!! 決着を見せないのがまたすごい。客に想像させる余白を残して終わるという。かああっこいい!! さすが新感線。観に行って本当に良かったです。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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