瀬を渡り水の向こうへのナビゲーター   topページ > 2014年12月13日  

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星の数ホド。

2014 - 12/13 [Sat] - 02:34

新国立劇場で上演中の「星ノ数ホド」を観てきました。浦井健治くんと鈴木杏ちゃんの二人芝居。新国立劇場の小劇場、初めて入りました。このサイズの劇場でやるのが一番正しいと思える、役者さん二人きり出ずっぱり逃げ場なしの一幕もの。かなり実験的なつくりのお芝居なので、「こういうものらしいよ」という前情報入れずに観たらちょっと最初の方とかわかりづらいかもしれません。でも観に行って良かった…あらすじ説明するのも感想言うのもすごく難しいんですが、私、このお芝居すごく好きです。
というわけで、難しいけど感想です。ネタバレしますよー。

登場人物は2人。養蜂家のローランドと、物理学者のマリアン。これは、この2人を中心にした平行宇宙の物語。様々なifが積み重なった、星の数ほどの可能性の物語。
2人の出会いはバーベキュー場。こっちの世界で2人が出会ったとき、バーベキュー場は晴れていて、ローランドには妻がいた。また別のマリアンがローランドに出会ったとき、ローランドは前の彼女に振られたばかりで恋愛に乗り気じゃなかった。また別のマリアンは雨のバーベキュー場でローランドに出会い、2人は恋に落ちた。2人が交わす会話はどのときも大体同じ、でもちょっとずつ違う。
様々なifの後、付き合い始めた2人がいる場面。初めてのデートの後、マリアンの家に行ったローランドは、「やっぱり今日は帰って」とマリアンから言われる。あるローランドは「え、どうして? 理由を聞かせてよ!」と食い下がり、また別のローランドは「ぼく、何かした? まずいこと言った?」と心配し、違う世界のローランドは怒り、こちらの世界のローランドは自分から「ぼく、帰った方がいいね」と言い出す。
デートを重ねる2人の場面。マリアンの話す物理学の話がさっぱりわからないローランド。そんなことより彼女に膝枕してほしいなと思うローランド。量子力学の世界では自分のやろうとしてることがすでに決定してるのだと言われて、ひたすらにびっくりするローランド。首尾よく膝枕確保に成功するローランド。どのローランドも可愛いなと思う観客(←私だけじゃなかったはず!) そしてキスをする2人。あるいは、キスをしない2人。
同居している2人の場面。なんだかちょっと倦怠期っぽい中、マリアンが浮気を告白する。別の世界ではローランドが浮気を告白する。そして別れる2人。
再会する2人の場面。再会の場所は社交ダンスの教室の前。こっちの世界ではローランドがマリアンに声をかけ、でもマリアンは再会を喜ばない。また別の世界ではマリアンがローランドに声をかけ、でもローランドには婚約者がいる。また違う世界ではマリアンに婚約者がいる。そして、こちらの世界では、2人はよりを戻して付き合い始める。
ローランドのプロポーズの場面。マリアンの勤め先の大学にローランドが真昼間にやってくるのは同じ。でも、このローランドは手紙を読み上げてから指輪を渡し、マリアンはそれを喜ばない。こっちのローランドも手紙を読み、でもマリアンはプロポーズを断る。違うローランドは書いた手紙を忘れてきて泣きそうな顔をし、別のローランドは「手紙を書くべきだったー」と後悔し、そしてこのローランドは手紙を読み、マリアンは感動してローランドに抱きつく。
マリアンが病気になり、脳腫瘍だとわかる場面。マリアンが1人で検査結果を聞きに行くのは同じ。でも、このマリアンとローランドは検査の結果をめぐって言い争いをし、あっちのマリアンは良性だから大丈夫だとローランドに抱きつき、別のマリアンは絶望に暮れる。
そして、病気になったマリアンはある選択をする。はっきりとは語られないけれど、おそらくは尊厳死を。どのローランドも、マリアンに生きていてほしいと思う。あるマリアンは「帰ろう」と言ってローランドと抱き合い、あるマリアンは…――。

このお芝居、役者さんも演出家も本当に大変だと思います!!
並行宇宙における様々な可能性のお話なので、ピーンという音が鳴る度、違う宇宙に切り替わっちゃうんです。だから、場合によってはものの十秒にも満たないシーンを何度も何度も役者さんは繰り返すことになる。だけど、繰り返す度、台詞や役の設定が変わってる。しかも途中に何度も違う時間軸のシーンが挟まれたりして。よ、よくできるなあ、これ…映像ならともかく舞台ですよ舞台。途中でこんがらがったらもうおしまいですよ、なんて怖い舞台なんだろう! 浦井くんと杏ちゃんの役者としての底力を見た気分です。
浦井くんは養蜂家の役。茶色いふわふわ髪を見慣れていたので、黒い上に結構切った髪がなんだか新鮮。若干舌足らずな感じに話すローランドは服装も野暮ったくて、はきはきしてて理知的なマリアンとは対照的。「あ、この人、ちょっと駄目な人だ(笑)」と思ってしまいましたよ。本当に普通の男の人で、マリアンに膝枕してもらいたくてしょうがないシーンが滅茶苦茶可愛かったです(笑)。初めてのデートの後の会話とか、浮気告白後の喧嘩のシーンとかは、「うわあ、あるよねこういうの」という感じでした。マリアンにキスするシーンが結構あったんですが、初デートの後に上手いこといい感じになって「えいっ」とばかりにほっぺたにキスするローランドが初々しかった(笑)。
杏ちゃん演じるマリアンは物理学者で、ローランド相手に量子力学の話を繰り返す。頭のいい女性ならではのガードの堅さを感じさせたり、イラつく女をものすごくリアルに演じてたり、かと思えばすごく可愛らしかったり、やっぱり杏ちゃん上手いなあ…本当にいい女優さん。「冬眠する熊に添い寝してごらん」のときは色気を感じましたが、今回は理系女子の役のせいか、そういう色っぽさはなく。役者さんが出ずっぱりの舞台なので、なんと着替えも舞台上で結構大胆にしちゃうんですが、下着姿になってもいやらしくない。でもせっかくなので杏ちゃんの色白のお肌とか二の腕とかをガン見する私(笑)。浦井くんも大胆に着替えてましたが(しかし、シャツの前を開けるのではなく、セーターでも脱ぐみたいにがぽっと脱ぐのは正しいのだろうか…時短のため?)、そちらはそちらで筋肉を愛でさせていただきました(笑)。「アルジャーノンに花束を」のときにあれちょっと太った?と思ってたんですが、今回は脱ぐシーンがあるからか胸筋も腹筋も「ビッグ・フェラー」のときみたいに鍛えてましたね! 照明さんがまたいい仕事を…筋肉に素敵な陰影が…さすがわかってらっしゃる!(笑)

2人が出会って、初デートして、同棲して…という流れの間に何度も差し挟まれる、木の下に2人が立ってるシーン。これ、最初は何のシーンなのかわからないんですよね。ただならぬ雰囲気だけが伝わってきて。どうもマリアンは上手く言葉が出なくなってるらしい、何かの病気だろうか、「会員になる」とか「外国に行く」とか「薬を使う」ってどういうことだろう…と思ってたら、そのうちにマリアンが脳腫瘍になっていることが別のシーンでわかってきて。このマリアンの病気のシーンが、すごく辛いんです。前頭葉にガン細胞がちらばってるせいで、言語機能が侵されて上手く喋れなくなって。言葉が出てこないことに苛立つマリアンと、根気よく話を聞こうとしつつも「もうわかったよ」と遮ってしまうローランド。だから、とある宇宙でマリアンが「良性で、しかもステージ1だった! 完治するって!」と明るい顔で言いながらローランドに全身で抱きついたとき、すごく嬉しかったんです。でもその直後の別の宇宙では、マリアンの病気はひどく悪くて。おおう、振り回してくれるなあこの芝居…。

なんというか、小さくて透明な水槽にちょっとずつ水が溜まってくみたいなお芝居なんですよ。同じシーンを何度も何度も繰り返すうちに、どんどん観客の心の中に水が溜まってく感じ。時には激しく揺さぶられて中身がばしゃばしゃこぼれて、時には落ちてくる水が薔薇色になったりして、かと思えば一瞬で溜まった水が全部消えたりして、その後またどっと増えたりもする。…えーと、ちょっと自分でも何言ってるのかわからなくなってきましたが(笑)、なんかこう、上手く言えないんですけど、観てると胸の中に何かが溜まっていくんです。そして何回か溢れました私。特に、病気になったマリアンが、自分と同じような病気になった人の家族が書き込みしてるネット上のフォーラムを見たと話すシーンの辺りで、どわっと溢れましたね。言葉で話すマリアン、もう口では上手く話せなくなって手話で会話するマリアン、それに付き合うローランド。繰り返される度にどんどん胸の中が一杯になって、どわっといきました。尊厳死を選択したマリアンに付き添って、おそらくはそれを行ってくれる国まで来たローランドがマリアンに「君に生きていてほしい」と言うシーンで、とあるマリアンが言った台詞もかなり胸にきました。「物理学の世界では、過去も未来もないの。私があなたといた時間は、もう増えないけど、でもずっとそこにあるの」…これ、素晴らしい台詞。

同じシーンが何度も繰り返される度に、思わず祈っちゃうんです。「次は上手くいくといいな」って。「この2人が幸せになれるifが見たいな」って。だからこそ、ラストシーンが、一度別れた二人が再会してやり直そうとする場面であることに救われました。別の宇宙の二人が別れたまま二度と会わなくても、あるいは結婚したけど片方が死んでしまったとしても、このラストシーンの2人がたどり着く先が幸せな未来である可能性もないことはないわけで。「今度こそ幸せになってね」と思いながら、カーテンコールの拍手をしてきました。来週、もう一回観に行きます。ところでこのお芝居、タイトルも素敵ですね。原題は「CONSTELLATIONS」(直訳すると「星座たち」?)なんですが、それをよく「星ノ数ホド」と訳しましたね! センス良いなあ…大好きです。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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