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ふぁんとむ。

2014 - 09/19 [Fri] - 00:20

赤坂ACTシアターで上演中の「ファントム」を観てきました。ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」のミュージカル化といえばたぶん誰もが知ってるのはアンドリュー・ロイド・ウェーバー版ですが、こちらはモーリー・イェストン版。基本ストーリーは同じですが、細部は色々違うし、勿論曲の雰囲気も全然違う。以前、大沢たかおさん主演で上演されたときに、初演の方を一度観てるんですが…ええと、実は私、そのときの印象がものすごーく悪くてですねー…歌唱力の問題とか、外国人キャストの方の日本語能力の問題とかもあるんですが、とにかく演出が…クライマックスでファントムがあまり意味もなく客席上に宙づりになってたんですけど、そのロープ支えてるスタッフさんが裏方丸出しの格好で客席から丸見えの場所に堂々と立ってたりとか…冒頭のファントムの殺人シーンとかもツッコミどころ満載で…その他色々、私にとって数少ない「ごめんなさいまだ舞台終わってないけどもう帰りたい!」という作品だったのです。
でも今回は、城田優くんがファントム。それなら歌唱力は問題なし! しかも演出は、去年「4stars」コンサートを手掛けたダニエル・カトナーさん。それなら演出も問題なしだ! というわけで安心して観に行ったのですが、はい、今回はきちんと感情移入して観ることができました。泣けましたー。
というわけで、感想です。ネタバレしますよー。

クリスティーヌ・ダーエは、田舎から出てきたばかりの女の子。街角で歌う彼女の声に魅せられたフィリップ・シャンドン伯爵は、「ぜひ歌のレッスンを受けるといい」と、オペラ座の支配人キャリエール宛ての推薦状付きで彼女をオペラ座に向かわせます。が、まさにその日、キャリエールはオペラ座支配人の座を解任されてしまいました。代わりに支配人の座に収まったのはアラン・ショレ、彼の妻のカルロッタがオペラ座の次の歌姫になるとのこと。けれど、カルロッタはひどい音痴! その声を聴いて「耐えられない!」と地下で頭を抱える黒衣の人物が1人。彼の名はエリック、オペラ座の地下に住まうファントム。理想の声の持ち主はどこにいるのだろうとオペラ座の中を彷徨っていたエリックは、カルロッタの衣装係として留まっていたクリスティーヌの歌を偶然聴いてしまいます。なんて美しい声! それに、どこか懐かしい声。エリックはつい彼女に話しかけてしまいました。「君の声は素晴らしい。でも、レッスンを受ける必要がある。僕が教えるよ。でも、顔は見せられない」こうしてエリックは、仮面で顔を隠した謎の歌い手として、クリスティーヌにひそかにレッスンを行うようになりました。みるみる上達するクリスティーヌ。ある日エリックは、彼女にオペラ座のオーディションを受けさせます。結果は見事合格! が、実はそれはカルロッタの陰謀でした。クリスティーヌの美貌と歌声に嫉妬したカルロッタは舞台が始まる直前にクリスティーヌに毒を飲ませ、彼女の声をつぶしてしまったのです。舞台上で歌えなくなり、茫然と立ち尽くすクリスティーヌ。それを見て激怒したエリックはシャンデリアを落下させ、混乱の最中にクリスティーヌを地下へとさらっていきました。「地上は地獄だ、そんな場所に僕の天使を置いてはおけない。彼女はずっと僕とここで暮らすんだ」エリックは、止めに来たキャリエールに向かってそう言い放ちます。クリスティーヌもまたエリックを信頼し、留まろうとします。が、彼女は仮面に覆われた彼の素顔をどうしても見たいと思ってしまいました。たとえどんなに醜くても、自分はきっと彼を愛せるはず。クリスティーヌの懇願を最初は拒んだエリックでしたが、ついに彼は仮面を外し、彼女の前に顔をさらしました。けれどその瞬間、クリスティーヌは恐怖の悲鳴を上げて逃げ出してしまったのです! 絶望に打ちひしがれるエリック。もう彼には何も残されてはいません。狂気にかられて地上へ向かうエリック。しかしその頃地上では、エリックに殺されたカルロッタの死体が発見され、警察が彼を捕えようとオペラ座を包囲していたのでした……――。

終始圧倒的な存在感を見せつけるロイド・ウェーバー版のファントムに比べて、こちらのファントムは大変人間らしい。他人と顔を合わせることを恐れ、己自身の顔に怯え、不安を吐露し、恋をすれば一途に焦がれる。城田くんの演技がまた素晴らしく、エリックの子供っぽさや不安定さが見事に表現されていて! カルロッタの歌を聴いて「信じられない!」「だってこの人、歌えてないよ!?」と驚愕するシーンなんかは、妙に可愛かったりもして(笑)。そう、このお話の中のエリックって、かなり純粋なんですよね。キャリエールが解任されたと聞いておろおろしたり、クリスティーヌに話しかけるときにものすごくどきどきしてたり。地下でのデートシーンなんて、「中学生!?」と思うほどのピュアさ加減! でも、ふいに「そうか、殺しちゃえばいいんだ」と呟いたりするあたりに普通の人とは違う不気味さも漂うという。上手いなあ、城田くん…歌も素晴らしかったです! 甘い高音も深い低音も、素晴らしく響いてた! 「あなたこそ音楽」がやっぱり一番好きな歌かなあ…彼の声でCDが欲しいですよ。それに見目麗しいし背も高いので、黒マントばさあっ!が似合う似合う。クリスティーヌに裏切られたときの彼の絶望のシーンは、悲しかった…あの瞬間、ちょっと私、クリスティーヌを憎みましたよ(笑)。実はエリックの父親だったキャリエールと親子の愛を確かめ合うシーンも、泣けましたね。
クリスティーヌ役は、山下リオちゃん。A-Studioのアシスタントの子っていうのは知ってたんですけど、歌はどうなのかなあと思ってたら、これがまたいい声してた! 多少不安定なところもあった気はしますけど、声量もあるし、よく響いてました。あと、お顔立ちがとてもはっきりしてるので、舞台向きの方だなと思いました。存在感もあるし、もっと舞台で観てみたいです。白いドレスも似合ってましたけど、冒頭で着てたコートも可愛かったですね! クリスティーヌは、エリックの母親に瓜二つということで、リオちゃんは回想シーンのお母さんも演じてましたけど、このときの表情がまた良かった…エリックの顔が彼女にだけは完璧に美しく見えていて、「なんて美しい子」と赤ん坊のエリックに向かって歌いかけるという…優しくて美しくて、素敵でした。でもクリス、やっぱりエリックの素顔見るなり悲鳴あげて逃げるのはどうなのよ! あんたが見たいって言ったんでしょうが! あと、オーディションに合格して初舞台に立つ前のシーンで、ドアではなく鏡から出入りするエリックを平然と受容してるのがなんだか笑えました(笑)。あのー、その出入りに疑問はないの? と。
そしてカルロッタ役はマルシアさん。面白かった(笑)! とにかくキャラが濃い! わざと下手に歌うのって実は結構難しいんじゃないかと思うんですけど、楽しそうに演じてらっしゃいましたね。旦那様ときゃっきゃうふふしてるシーン、可愛かったー。音痴のカルロッタが舞台に立つのが許せないファントムにひたすら嫌がらせを受けて半べそかくシーンも、可愛かったですね。またこの嫌がらせが、子供っぽいながら的確で…かつらに大量の虱をしこむとか、舞台上で持ち上げるワイングラスをお盆に糊で接着しとくとか。「では、『アイーダ』は喜劇ではないと?」「『椿姫』も喜劇ではないんですね!」という警部の台詞が大変笑えました。そりゃまあ、椿姫がお盆ごとグラス持ち上げたら客は笑うわなあ…。
フィリップ・シャンドン伯爵は、非常にチャラかったですねー…ラウルにあたる役どころなんですが、クリスティーヌのほかにもナンパしまくりってどうなんでしょう…ホストかお前は!とちょっと思ってしまいました(笑)。以前観たときはルカス・ペルマンさんが演じてたんですけど、「待てよ!」とかっこよくクリスを呼び止めてほしいところを「マテイヨゥ!」になってて思い切り脱力した覚えが…いえ、大変ハンサムで歌も上手かったんですけどね…でもあのときは、どれだけ女の人にモテまくりでも、西洋人の強みかホストには見えなかったですね、そういえば。

音楽の迫力自体はやっぱりロイド・ウェーバー版の方がある気はするんですけど、イェストン版の音楽も私は大好きです。やっぱりCD欲しいなあ…なにげに名曲ぞろいな気が。城田くんの声が楽曲にすごく合ってるし、大満足の舞台でした! うん、やっぱりミュージカルは、歌える方にやっていただきたい。いえ、大沢たかおさんも役者としては大好きなんですけど(だってご本人も言ってたじゃないですか、「僕、歌は苦手なんです…」って!)。

で、トークショー付きの回だったもので、終演後はそのままの席で城田くんと浦井健治くんのトークを聞いてきました。…ええと浦井くん、出演してないですけど…まあ、プライベートでも仲良しさんだそうですからね。トークショーの間も2人で司会の人そっちのけで話してて楽しそうでした。しかし二人とも背が高いものだから、用意された椅子に腰掛けると脚が余りまくり! 特に城田くんの脚の余り具合は大変な感じでした。お疲れなんだからもう少し座りやすい椅子にしてあげればいいのに!
トークショー冒頭では、司会の女性が浦井くんを紹介がてら「浦井さんは、三日後にはご自身が主演される『アルジャーノンに花束を』の初日ですが…」とせっかくふってくれたのに、「そんなことは関係ないです! どーだっていいです! 僕もう、大感動!! 大感動しました、この舞台観て!!」と自分の舞台の宣伝をぶん投げて「ファントム」を絶賛しまくる浦井くんが大変素敵でした(笑)。
城田くん曰く、エリック役はやっぱりものすごくしんどいのだそうです。ロミオ役より正直きついし、しかもシングルキャストで一日二回公演。結構叫ぶので喉も辛いし、気持ち的にもしんどいと。テンションの上がり下りがものすごい役ですものね、クリスティーヌに拒絶された後のエリックの叫びは絶叫でなければいけませんし(そのときに背景のカーテンを引きむしるんですけど、それについて浦井くんが「あれ、『あーっ、優くん壊しちゃったー!』って」と感想を述べ、城田くんが冷静に「演出だからね?」と言ってたのが面白かったです)。本当は、カーテンコールも出るの辛いんだそうですよ(笑)。まあ確かに、ラストシーンで死んで、その直後に着替えてカーテンコールですからね…「ロミオのときは死んでから結構時間あったから」って言ってましたけど、それはそれで身も蓋もない言い方ですね! 
お客さんの質問に2人が答えるコーナーでは、「ファントム稽古場の一番笑える話を教えてください!」という質問に対しては、「あーでも、これ言っちゃうと、この先観る方の世界観が壊れちゃうし…山下リオに怒られちゃうから」と城田くんが悩み、浦井くんが「そうだね、その信頼感は大切にしないとね」とうなずき、「明日から舞台でキスしてくれなくなっちゃたら困る」ということで、最終的には「秘密です」で終わりました(笑)。何か言い間違いをしたみたいですけど、リオちゃん何言ったんだ(笑)。その代わりに城田くんが披露したのは、「ロミオ&ジュリエット」のときの浦井くんの台詞間違いでした。いきなり立ち上がって浦井くんを指差し、「この人! すごい言い間違いしたんですよ!」と言い出すから何かと思ったら、ロミジュリ二幕冒頭のナンバー〈街に噂が〉の後、ロミオに怒りながらはけていくマーキューシオに向かって「マーキューシオ!」と呼びかけなければならないところを、「ベンヴォーリオ!」と叫んだとか! 「俺、もうはけちゃってたんだけど、『ええっ!?』ってなった! 『自己紹介!?』って!」と言う城田くんに対し、「え、それ俺? 俺だったー?」とさっぱり覚えていない浦井くん(笑)。話に入り込んじゃうと、役名ではなく役者さんの名前で呼んじゃったりすることはあるよねと2人で話してました。
あと、ロミジュリの思い出として、再演のときに浦井くんが出ないと聞いた瞬間、城田くんがわーっと浦井くんに「てめこのやろマジふざけんなお前が出なかったら締まらないだろ!」と言ったという話も出ましたね。初演のときは他キャストがダブルだったりトリプルだったりしたのに(ここ、城田くんが「他のキャストはとっかえひっかえで」と言って、浦井くんに「とっかえひっかえって!」と突っ込まれて、「代わる代わる?」と言い直してました。「ニホンゴムズカシイネ!」「ねー」と笑いあう二人が可愛かった!)、ベンヴォーリオだけは浦井くんのシングルキャストで、一番大事な歌を歌ってラストも締めてくれてたので、浦井くんがいなきゃ駄目じゃんと思ったらしく。浦井くんも苦笑しながら「あのとき、優と育からすごい連絡きた」と言ってました。
「浦井くんの『ボンベイ・ドリームス』での役どころを教えてください!」という質問(いやあの、これ「ファントム」のイベントなんですけどー…大丈夫なのかしらとちょっと思ってしまいましたよ)には、浦井くんがわーっとあらすじを話した後に城田くんがあらためて浦井くんの役どころを訊き、「優しくてちょっと天然な感じで」「あ、つまり普段の浦井健治ね」と結論づけてましたよ(笑)。
そんな感じできゃっきゃと話して、最後はなぜか司会の方から「それじゃ、最後にお互いの大好きなところを」と謎のフリをされたりもして(割と真面目に二人とも答えてたんですけど、最終的には浦井くんが笑い崩れてましたねー)、2人で「とぅーるるっとぅるるとぅーるるっ♪」と歌いながらトークショーは終了。ええとそれもしかして徹子の部屋の…? 先に歌い始めたのは浦井くんだったんですが、あっという間に合わせる城田くんに、2人の仲の良さがうかがえたような。とても楽しいトークショーでしたよ!

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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