瀬を渡り水の向こうへのナビゲーター   topページ > 2014年09月07日  

君となら。

2014 - 09/07 [Sun] - 19:31

「君となら」を観てきました。パルコ劇場にて。
 三谷幸喜さんが19年前に書いたコメディだそうです。初演・再演は山田和也さんが演出されたそうですが、今回はキャストもあらたに、三谷さんご自身の演出で上演! 面白かったー!! もう、劇場を出るとき自分でも顔がにこにこしてるのがわかるくらいでしたよ。
というわけで、感想です。例によってネタバレいたしますよー。

舞台となるのは、床屋さんを営む小磯家。今日は、夏の年中行事の流し素麺の日ということで、家族全員が集まっています。パジャマのままいつまでもだらだらしているお父さん、素麺の準備に大忙しなお母さん、もうすぐ結婚する予定の長女あゆみ、そしてしっかり者の次女ふじみ。あゆみの恋人は通称「ケニー」、本名は諸星賢也、青年実業家とのこと。でも、まだ家族の誰もケニーに会ったことはありません。せっかくだからケニーも呼んだらどうかというお母さんに対し、「また今度ね」とはぐらかすあゆみ。あゆみはこっそりと、ふじみにだけ相談を持ちかけます。実はケニーは実業家ではあっても青年ではないというのです。なんと今年でジャスト70歳! しかもケニーは、今日小磯家に挨拶に来るつもりらしく、すでに近所のファミレスにいるとのこと。写真を見せられ、「こりゃあないわ、こりゃあまずいわ」と言うふじみ。あゆみもまずいという自覚はあるらしく、「じゃあとりあえず今日は事情を話して帰ってもらうわ」とケニーに会いに出かけていきました。が、その直後、小磯家の庭に現れた一人の老人。それは、あゆみとすれ違いでやってきてしまったケニーご本人でした。たまたま居間に一人でいたお父さんが対応するも、当然のようにケニーの父親だと勘違いしてしまい、しばし噛み合わない会話が続きます。が、やがて戻ってきたふじみは一目見るなり状況に気づきました。やばい! まずい! お姉ちゃん早く帰ってきて! 慌てて帰ってきたあゆみはお父さんに事情を説明。驚き呆れるお父さん。でもそれより何より問題なのは、お母さんです。繊細でちょっと情緒不安定なところがあるお母さんに下手に事実を伝えたら、ものすごいショックを受けてしまうかもしれません。あゆみとふじみとお父さんは、とりあえず今日の間はなんとかごまかそうと考えます。「ケニーには、婚約者のお父さんのふりをしてもらおう」一度はそう思ったあゆみですが、いざケニーを前にすると言い出せません。だって、年齢のことを一番気にしているのはケニーなのです。お母さんのこともケニーのことも傷つけたくない。とにかく今日はなんとかやり過ごそう! けれど、ケニーの息子の玄也まで小磯家を訪れてきたものだから、事態はさらに大混乱! その場しのぎの嘘とごまかしが誤解と勘違いを呼び、どんどんこんがらがっていく! はたして小磯家と諸星家はどうなってしまうのでしょう!?

最初脚本が書かれた時代そのままの設定なので、劇中、ポケベルは登場しても携帯電話はありません。そういえば、ロビーで流れていた音楽も懐かしいものばかりでしたね。「ラブストーリーは突然に」とか「もう恋なんてしない」とか「さよなら人類」とか。
お父さん役は草刈正雄さん。やっぱりかっこいい! 最初にこの芝居のチケット取ったときに私、勘違いをしてまして、竹内結子さん演じるあゆみが連れてくる年上の結婚相手が草刈正雄さんなんだと思ってたんです。で、その後三谷さんの連載エッセイ読んで「…あ、そうか、草刈さんはお父さん役なんだ」と気づきました。何だろう、あんまり草刈さんにお父さんってイメージがなかったせいですかね、いつ見てもお洒落で素敵な男性なので。だけど、劇場で買った公演パンフの三谷さんのお言葉に「ケニーが草刈さんだったら話が成立しない、かっこいいからお父さんが嫌がらない」というようなことが書いてありまして。…うん、まあ確かに、草刈さんならどこの家のお父さんもそんなに嫌がらないかもしれませんね(笑)。
そんないつ見てもお洒落で素敵な草刈さんが、かつて角野卓造さんにあて書きされた役を演じるというこの面白さ(笑)。しかも、三谷さんがあえて変更しなかったと仰っていたあの台詞、「どうするんだ、お前の母さんはお前の結婚相手のこと、すっかり草刈正雄みたいなやつだと思い込んでるぞ!」を草刈さんご本人が言う面白さ! 当時、素敵な男性といえば草刈正雄だったんだそうで。草刈さんご本人はこの台詞を言うときどんな気分だったのでしょうね(笑)。
竹内結子さんとふじみ役のイモトアヤコさんは今回が初舞台だったそうですが、全然そんな感じしなかったですね。2人ともすごく面白かった! 竹内さん綺麗…この方も大好きな女優さんなんです。年々綺麗になっていく気がいたします。この物語、あゆみがケニーの年齢を家族に言っていなかったことがそもそもの原因で、その後もあゆみがその場しのぎのことばかり言うからどんどん混乱していくんですけど、竹内さん演じるあゆみがあんまりにもキュートなので、全然嫌な感じがしないという(笑)。可愛かったです竹内さん!そしてイモトさんは、さすが体のキレがいい! 台詞も聞きやすいし、本当に面白い! 事態をなんとか丸く収めようと必死にフォローに走り回るふじみ役、似合ってましたね。渾身の「ニャー!!」も面白かった!
そしてケニー! 小林勝也さん! この前観た「ビッグ・フェラー」のフランク役はあんなに怖かったのに、今回のケニーの愛らしさときたらもう!! 「国民の映画」のときも面白かったですけど、やっぱりケニーには勝てません(笑)。草刈さんとの身長差もあって、なんだかとても小さくて可愛らしい感じ(笑)。あゆみが惚れちゃうのも、小林さんならまあ納得できます。台詞を言うときの間とか、ちょっとした動き方が、とにかく面白いんですよね。本当に素晴らしい役者さん。あゆみとケニーがきゃっきゃらぶらぶしてるシーン、すごく可愛かったです。

勘違いに勘違いが重なった末に出来上がってしまった構図は、「お母さんはあゆみの結婚相手は玄也だと思っており、ケニーのことは玄也の父親だと思っている。床屋の従業員の和田くんも、お母さんと同じ勘違いをしている。玄也は、自分の父親の結婚相手はお母さんだと思っており、お父さんは隣の家のおじさんで蕎麦屋さんでしかもオカマだと思っており、そしてケニーというのは小磯家で飼われているものすごく俊敏で目にもとまらぬ速さで動く猫だと思っている。」というもの。この勘違い組「お母さん・玄也・和田」の間を、事実を知る「お父さん・ふじみ・あゆみ」が飛び回って続くドタバタ劇。ごまかしにごまかしを重ねるからどんどんひどいことになっていく(笑)。特に、長谷川朝晴さん演じる玄也が面白くて! ドラマで見かけるときは割と飄々とした役が多い方のような気がするんですが、玄也はそもそもキャラが濃い! 七三分けというよりも八二分けな髪型(しかも立派なもみ上げ付き)、やたらと腹式発声ないい声で喋り、他人の家の電話を借りる度に「こういうことはきっちりしておかないと」と10円玉を置き、ポケベルが震える度に床を転げまわって悶える男! もう本当に大好きこの人(笑)。お母さんは玄也のことをケニーだと思っているので、ことあるごとに玄也に向かって「ケニー♡」と呼びかけ、その度に玄也は猫を探してあらぬ方向を向くとか(笑)。あ、でも、流しそうめんセットが舞台に登場したとき、唯一「これ、天井どうなってるのかな!?」と突っ込んだのは玄也でしたね。二階の物干し台から(明らかに居間の天井を突き破って)斜めに下りてきてる長い竹。あれ、本当にそうめん流してましたねー、すごいセット! あれが出てきた瞬間、劇場がなんか竹っぽいにおいに包まれてましたよ。

そして長野里美さん演じるお母さん。可愛かったー! 「ロスト・イン・ヨンカーズ」のガート役もすごく良かったですけど、今回のお母さん役も本当にもう可愛くて面白くて! 娘が結婚相手を連れてくるということできゃっきゃと浮かれてる様が、すごくキュート。草刈さんとのらぶらぶ夫婦ぶりも素敵でした。何より、クライマックスのバスケットシーン! 結局ごまかしきれずに全員に真実が打ち明けられた後、あらためてお父さんがケニーに向かって「勘弁してください。私には夢があったんです、娘の結婚相手と庭でバスケットをするっていう夢が」と結婚を断ろうとしたことから始まるバスケット。なぜだかその場の誰か一人でもゴールを決められたらあゆみの結婚が許されるという流れになり、次々と挑戦するもなかなかゴールが決まらず(小林さんがものすごく可愛かった…「てくびっ」って。へろへろって)、誰もがあきらめかけたとき、すっと立ち上がったお母さん! あれだけげらげら笑い続けてた客席がしーんと静まり返るくらい張りつめた緊張の中、ボールを手にゴール前に進み出るお母さん! まさかまさかと思っていたら、静かに足元にボールを置くお母さん。そして――おもむろに脚立を持ってくるお母さん(笑)。ちょっとー!! 観客全員、ものすごく期待してたんですけどー!! 

ラストは、実はお母さんの誤解は解けてなかったとか、来週ふじみが連れてくる結婚相手はもっとすごいらしいとか、最後の最後まで笑わせてくれる形で。ふじみの結婚相手が一体どんななのか気になりますねー、おじいちゃんでもなくて高校生でもなくてニューハーフでもないって…あゆみが「随分思い切ったわねえ」って言うくらいですから、いっそ同性だったり、いっそ人間じゃなくてコモドドラゴンだったりしてね(笑)。
ああそれにしても面白かった…舞台で観られて幸せでした。ぜひまた再演していただきたいです。というかDVDが欲しいです! 大好きです、こういうお芝居!

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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