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抜け目のない未亡人!

2014 - 07/15 [Tue] - 22:34

「形あるものはいつか必ず壊れるんだ。そしてそれは、今日かもしれない」というのは、高所恐怖症の言い訳として福山雅治さんがよく仰る言葉ですが(高いタワーとかロープウェーとかが怖い理由として、「俺が乗ってる最中にこれが壊れたら死んじゃうでしょ?」という意味で言うわけですが)、その言葉をしみじみと思い知る出来事が起こりました。
夕食の最中に、家のどこかでどさどさどさどさどどーっと、何かが崩れるような音がしたのですね。でもDVD観てたし、ぱっと見は被害なさそうだし、猫も無事だし、「まあいいや」と思ってとりあえず放っておいたのです。
で、後で自分の部屋に行ってみたらば、机の書棚から、本やらDVDやら紙束やらがどさどさーっと雪崩を打って床に落ちてまして。机の上にも結構本を積んでいたので、それも巻き添えにして。ああ何かの拍子にバランスが崩れたのかな、と最初は思ったんですけど。
でも、よく見てみたら、書棚自体が壊れてた(笑)! 書棚を支えていた一番下の板が長年の重みに耐えきれなかったらしく、がたーんと斜めにはずれてまして。…うん、形あるものはいつか壊れます。そしてそれは、今日だったのです。

それはともかく、『抜目のない未亡人』を観てきました。新国立劇場にて。18世紀のイタリアの喜劇作家カルロ・ゴルドーニの戯曲を、三谷幸喜氏が大幅に改変! 18世紀から現代に時代を移し、お金持ちの未亡人が再婚相手を探す話からお金持ちで未亡人の元大女優が再婚相手と復帰作の映画監督を探す話にチェンジ! 原作を読んだことはないんですが、今回のものは台詞の95パーセントは三谷さんが作ったらしいです。でも雰囲気はそのままだとか。とにかく笑って笑って、非常に楽しい気分で劇場を後にしましたよ! 
というわけで、感想です。ネタバレしますよー。

舞台となるのはホテル・アマンテス。国際映画祭に沸くベネツィアの、とあるビーチの傍にあるホテルです。残念ながら一流ホテルではありません。なので、集うお客も一流の映画監督ばかりとは言い難く…けれどそこへ、元大女優のロザーウラがやってきます。彼女は10年前に有名な映画監督と結婚して以来、一本も映画に出ていません。夫が死んだことで再び自由の身となり、記念すべき復帰一作目の映画を撮ってくれる監督を探しているロザーウラ。恋愛と仕事の区別がつかない彼女にとって、それは新たな結婚相手を探しているという意味でもあります。ホテルには、イタリア人、イギリス人、フランス人、スペイン人の4人のと監督がいました。全員がロザーウラに言い寄ってきますが、何しろ大切な復帰作。ここは慎重に選びたいところ。ロザーウラは、ホテルで催された仮装パーティーにかこつけて、変装してそれぞれの監督の真意を聞くことにしました。はたしてロザーウラの復帰作の監督は、そして再婚相手は、誰になるのでしょう…??

ロビーから劇場内に入ってまずびっくりしたのが、舞台の広さ。座席が19列目だったので結構後ろかな、と思っていたのですが、10列目近くまで客席をつぶしてセットを広げてるので、もー舞台が近い近い(笑)。開放感あふれる海辺のホテルの…ガーデンなのかな? ベンチや寝椅子があって、門を開け放てば向こうはもうビーチで。幕はなく、客席も明るいまま、いきなり始まるお芝居。まず現れたのは、舞台の進行役でもあるホテルの副支配人代行アルレッキーノ。演じていたのは八嶋智人さん。私、この方大好きなんです! 舞台だと、生で観たのは『49日後…』と『太平洋序曲』。DVDで『噂の男』と『バッド・ニュース☆グッド・タイミング』も観ました。ドラマやバラエティでもよく見かける方ですが、この方の台詞の言い方がとても好き。いつでも聞きやすく、ちょっとおかしな台詞でも何の違和感もなく、しかも面白く聞こえる(笑)。マンガのキャラクターっぽい方ですよね。今回のアルレッキーノもとにかくよく喋るしよく動く! 「これぞ八嶋智人!」という感じで、とても楽しかったです。彼がとある失敗をしでかしたときに、客席に向かって「…言ってよ!」という台詞がまた大変おかしい(笑)。進行役なのでアルレッキーノはしょっちゅう観客にも話しかけるんですが、それがまた自然なんですよね。だからお客さんも皆くつろいで舞台を観られる感じで。

ロザーウラ役は大竹しのぶさん。間違いなく大女優ですね! 俗っぽいけどキュートで面白いロザーウラ、本当にはまり役だと思います。初登場シーンの「あっはっはっはっは~♪」と笑いながら舞台を駆け巡る様が、とてつもなく可愛い(笑)。夫がたくさんのお金を残して死んでくれて、これからの人生を満喫してやろうという気持ちがもう全身からあふれ出てました。
ところが、何しろロザーウラももう若くはないわけで。なのに本人だけはいつまでも若い気でいるのがおかしい(笑)。19歳で死んだジャンヌ・ダルク役のオファーをやる気満々で受けようとするって! おいちょっと待てと思いましたが、公演パンフの大竹さんのインタビューに「数年前にジャンヌ・ダルクの役を実際演じたことがある」とあって、「おおお、さすが大女優…」と思いました。ちなみに劇場でいただいたチラシを家に帰ってから見たら、有村架純ちゃんが今度やる『ジャンヌ・ダルク』の舞台のがまざってて、偶然でしょうけれどもまたひとしきり笑えました。
変装して、それぞれの監督の真意を聞きだすロザーウラ。あんなにロザーウラを熱心に口説いていたのに、どいつもこいつも本音では「彼女、もう歳だからね。でも映画のためにお金出してくれるから」「彼女の知名度が必要だから」「本命はペネロペ・クルスだけど、彼女に断られたとき用に声かけとこうと思って」と、実にひどいことを言う。失意のロザーウラは海に向かって叫びます、「あたしの油分を返してー!!」…お肌パサパサですか、そうですか。でもそんなロザーウラが最後に変装して話したイタリア人の監督だけは、本当に彼女のことを愛していて。新たな結婚相手と仕事を手に入れてご満悦のロザーウラ。にっこにっこした大竹さんがまた可愛いんだ…そりゃ確かに若くはないですが、可愛い。素晴らしいですね、本当に。

ロザーウラに言い寄る4人の監督は、それぞれのお国をよく表したお衣裳になってましたね。不器用だけど誠実なイタリア人のボスコ・ネーロは段田安則さん。イギリス人で貴族出身のルネビーフは中川晃教くん。フランス人でホストみたいなルブローは岡本健一さん。スペイン人でツッコミどころ満載なドン・アルバロ・デ・カスッチャが高橋克実さん。皆さんキャラが立ってて面白かったですが、高橋さんはもう反則でしょうあれ…登場のときから本当に笑いがこらえられませんでした(笑)。なぜあなただけ、ワインレッドのバスローブに水泳用の足ひれ姿なの! と思ってたら、なんと彼だけうっかりホテルの予約を忘れてて、本当はここに泊まってないという設定でした。だから基本出入りはビーチ。泳いでどこか行っちゃう(笑)。遠くの方まで流されちゃって、なんか海の向こうで小さな高橋さん人形がぴちゃーんと跳ねたりする(笑)。一人称は「拙者」だし、イタリア語がよくわからないのかその場の流れと何の関係もないことを適当に言ったりするし、ああもう高橋さん大好きです! 面白すぎる! 前に『シレンとラギ』に出てた時にはあんなに怖かったのに! あ、あと、高橋さん、意外と筋肉モリモリなんですね。ちょっとびっくり。(バスローブ脱いだ後は基本ずっと水着姿なのです) 
中川くんは、そういえば私、生で観るの初めて…イギリス人っぽく堅苦しい喋り方がお似合いでした。台詞のはざまに「…くっ」と気持ちを押し殺すような声をわざと混ぜるシーンが、ものすごく面白い(笑)。そしてさすがの美声! ルブローが歌い始めたとき、「え、せっかくだから中川くんも歌わないかな!」と期待したんですが、ちゃんと歌ってくれたー!! それを言うなら段田さんも歌ってくれたー!! ていうか最後はまるでミュージカルのようでしたね!

ロザーウラの妹であるエレオノーラ役の木村佳乃さんは、本当に美しいですよね! もともと美人な方でしたけど、ここ数年、どんどん美しさが増していってる気がします。エレオノーラはちょっとお馬鹿で大根な、一応女優。そんな役をまさか佳乃さんにやらせるなんて! でも、ふわっふわした地に足がついてない感じがすごく面白くて可愛くて、「こんな彼女舞台じゃないと観られない!」と思うとすごく嬉しくなりました。
ロザーウラのエージェントのマリオネット役の峯村リエさんも滅茶苦茶面白かったですね! 彼女と大竹さんの会話シーンがすごく好き(笑)。昔は女優でルブローの映画に出たことがあって(クロマニヨン人の役でしたが)、しかもルブローと付き合ってたというマリオネット。彼に自分を思い出してもらおうと、渾身の火起こし演技を披露する様に爆笑しました。その後、ルブローと上手くよりを戻せそうだったのにロザーウラに邪魔されて舞台奥に貞子のように佇む姿もたまらなかった! 仮装パーティーでのダ・ヴィンチ姿にアルレッキーノが「誰!?」とツッコんだときには、たぶん客席の誰もが同じツッコミを心の中でしてたと思います。

そして、浅野和之さんのパンタローネ! 大変なお年寄りで、脚本家で、ロザーウラの義理の弟で、時速3メートルで歩く男(笑)。高橋さんも反則でしたが、浅野さんもかなり反則…客席からの登場が多かったので、もう舞台に上がる前から目が行っちゃって笑っちゃって大変でした。しかも都合の悪いことを訊かれると、アルレッキーノが「速っ!」と叫ぶほどのスピードで客席階段を駆け上がって退場していくという。エレオノーラと結婚したくて、彼女のことを考えるだけでもう体が反応してしまう困ったエロジジイでした(笑)。もう、この人が歩いてるだけでとにかくおかしい!

公演パンフで三谷さんが仰ってるとおり、感動するような作品ではないし、何の衝撃もないし、くだらないといえばくだらないお話なんですが、でも達者な役者さんと笑える脚本と演出で、とにかく楽しい気分になれるお芝居でした。ぼろぼろ泣いてしまうようなお芝居や、ちょっとすぐには処理できないくらい重たい気分になってしまうお芝居も好きですけれど、こんな喜劇でげらげら笑って帰るのも私は大好き。何も考えずにただ笑いに劇場に行く、それってとても素敵で贅沢なことかもしれませんね。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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