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ただただ笑ってきました。

2014 - 05/19 [Mon] - 01:26

三谷幸喜作・演出の「酒と涙とジキルとハイド」を観てきました。天王洲銀河劇場にて。
公演パンフの三谷さんのお言葉に「ただ面白いだけの、笑った後に何も残らない喜劇を作りたい」という想いでこの作品を作ったというようなことが書いてありまして。うん、本当にその通りだった!(笑) もうとにかく、ただただ笑ってきましたよ! 超豪華キャストでドリフのコントをやったような、なんというか全力でコメディしてました!
というわけで、感想です。ネタバレしますよー。

舞台は19世紀末のロンドン。新薬の研究発表会を明日に控えたジキル博士は、婚約者のイヴ・ダンヴァースに向かって、自分が作った薬の説明をしていました。博士曰く、人間には善と悪の二つの面があり、その二つの人格を分離させる画期的な薬を発明したのだというのです。明日の発表会のリハも兼ねて熱弁をふるう博士、けれどイヴは退屈顔…どころか、話が始まるやいなや居眠り(笑)。イヴにとってジキルは、とにかくつまらない人なのです。が、育ちのいいイヴは面と向かってジキルに向かってそんなことは言いません。「明日の研究発表会、頑張ってくださいね」と鉄壁の笑顔でジキルを励まし、博士の研究室を後にします。
イヴがいなくなった後、研究室を訪ねてきたのは売れない役者のビクター。なぜ自分が呼ばれたのかさっぱりわからないビクターに、ジキル博士は例の新薬の説明をします。そして、ぽかんとしているビクターに、ぐいと新薬の入ったフラスコを突きつける。嫌がるビクター。それでも突きつけるジキル。「え、まさか僕に飲めって言うんですか!? 嫌ですよ!」逃げようとするビクター、その前でぐいっと自ら薬をあおるジキル。「あんたが飲むのかよ!!」薬を飲んだジキルは苦しみ始め、のた打ち回り、ついにはばったりと床に倒れ…でも、再び起き上がったジキルには何の変化もありません。「そう、何も起きないのだよ」つまり、人格を分離させる薬なんてできていないのです。でも、研究発表会は明日。「完成してから発表しろよ」と突っ込むビクターに、ジキルは言います。「君に、私のもう一つの人格、『ハイド』を演じてほしい」明日の発表会でジキルは自ら薬を試し、のた打ち回った末に衝立の裏に入り、そこでビクター演じる『ハイド』と入れ替われば、きっと他の研究者たちは騙されるはずだと。はっきり言って無茶苦茶な依頼ですが、高額報酬につられてビクターは受けてしまいます。ところがその後、ジキルの不在時に、イヴが研究室に戻ってきてビクターと鉢合わせしてしまったものだからさあ大変。とっさに助手のプールが言ったのが「こちらは、新薬の効果で現れた博士のもう一つの人格です!」という言葉。ジキルの悪の部分を集めた凶暴な男だという設定を押し付けられたビクターは、やけくそになって叫びます。「泣ぐ子はいねがぁー!!」最初は怯えていたイヴですが、調子に乗ったハイドがイヴを下品な言葉で罵り始めると、なぜかだんだん表情が興奮したものに。「…素敵!」ハイドこそ、イヴが求めていた刺激的な男性だったのです。ジキルとハイドは一人の人間だと信じ込んだイヴは、戻ってきたジキルに言います。「ね、お願い、もう一度ハイドになって!」…こうして、衝立の裏から二人の男が出たり入ったりのドタバタコメディが始まったのです…。

あの有名な「ジキル博士とハイド氏」を三谷さん流に味付けしたらこうなったらしい(笑)。
ジキル博士を演じたのは、片岡愛之助さん。「半沢直樹」のオネエな黒崎さんの印象が鮮烈ですが、今回のジキルはとにかく真面目で堅物。でも意外と姑息でちょっとお茶目(笑)。三谷さんの作品によく出てくる「真面目な人や何かに必死な人って、傍から見ると笑えるよね」という感じのキャラですね。イヴに向かってオヤジギャグを連発する様が大変おかしかったです(笑)。イヴが忘れていった本の中身を見たくてたまらないというシーンのじたばたぶりも(笑)。一瞬だけオネエキャラになるシーンもありましたが、あれは黒崎さんファンのためのサービスだったのでしょうか。いや、私も黒崎さん大好きでしたよ、ええ! しかしさすがは愛之助さま、素晴らしい存在感。歌舞伎の方はやっぱり顔が大きいなあ…そして目力がすごいなあ…あと、どんな動きでもなんだかすごく目を引く。面白かったです!
ビクターを演じたのは、藤井隆さん。なぜベートーベンみたいな髪型してるジキルが、こんなにも前髪ぱっつんなビクターをハイド役に選んだのかがまずわからない(笑)。藤井さんも面白かったです。なんなんでしょうね、全ての動きが絶妙に気持ち悪いんですよこの方(笑)。そして、汗だくでいっぱいいっぱいな感じの演技が、素なのかビクターとしての演技なのかわからない(笑)。ハイドとして懸命に下品な男を演じる様が大変笑えました。なまはげ!? 田舎のおっさん!? 志村けんさん!? なんだかもうよくわからない! そして、だんだんハイドの方がジキルよりも立場が上になっていく様が微妙に原作をなぞっていて、上手いですね。イヴにハイドの存在を知られるわけにはいかない以上、ハイドとジキルが同時に同じ空間にいてはいけないわけで。ハイドがでーんと中央に陣取って動かないとなると、隠れなくてはならないのはジキルの方。ハイドがイヴに対して様々なことをするのを、ジキルがものすごく悔しそうに、あるいは頭を抱えて覗き見ている様がものすごく面白かった!

だがしかし、今回私の目を一番引いたのは、イヴ役の優香さん! なあああああんてキュートな方なんでしょう! 何度となくテレビで見てるのに、ドラマでも見たことあるのに、ちょっともうびっくりするくらい可愛かった!! 少し喉がお疲れなのかいつもより低めの声がまたキュート! そして劇中でもネタにされてましたが、本当に顔小さい…ああもうこんなに可愛い方だったなんて! 朝日新聞に三谷さんが書いてるエッセイに、「最高のコメディエンヌの条件は、頭から水をかけられても可哀想に見えないこと」というような言葉があって、優香さんはまさにそれだと三谷さんが仰ってたんですが、今回のお芝居を見て「ああ、なんかわかる(笑)」と思いました。いやでも本当に可愛かった!
イヴは、見た目は清楚なお嬢さんですが、実はエロチカ小説が好きだったり下着は黒と赤のセクシー系だったりと、二面性を持っているキャラ。自分の内なる願望を解放したいけれどどうしてもできない、そんな彼女がハイドに「お尻をぺんぺんしてやる―!」と言われて大興奮してしまい、ハイドにぞっこんになってしまう(笑)。ジキルに向かって何度も「ハイドになって!」とねだり、断られるとミルクに薬を盛ってまでハイドを出そうとする。ついには自ら薬を飲み(そのままでは酸味がきつかったらしく、勝手にその場にあったワインで割ってしまうのがまたおかしい)、己の悪の部分を解放したハイドならぬハイジを呼び出してしまうのですが…何しろ薬は失敗しているわけで。清楚なイヴとは正反対な、一体どこのスケバンですかというようなハイジは、実は彼女の思い込みが作り出しただけのもの。でも、そのハイジが心底求めるのはハイドではなくジキルだったというのがまた面白い。ハイドが出てくると「ジキルを出せ―!」と騒ぎ、ジキルが出てくると大喜びで押し倒してしまう。それを面白がったプールが、ハイジに解毒薬を渡すと、イヴはハイドを出せと騒ぎ出す。ここから先のめまぐるしくジキルとハイド、イヴとハイジが入れ替わる様は、もう本当にドリフのコント(笑)。どたばたどたばた皆で走り回って、お疲れ様です役者の皆さん!(笑)薬は偽物だったと気づいたイヴが、自分が何をしていたのかを自覚して死にたがるシーンも面白かったです。「ちょっとごめんなさい」と言って誰か(最後の方はもう誰もいない空間に向かって言ってましたが)をどかしては、壁に向かってダッシュ! どーんと激突!(笑)

そして忘れてはならないのが迫田孝也さん演じるプール。見た目はどこのエルフ族の方ですかという感じのオールバック金髪ロングストレートなんですが、とことん冷静にかつマイペースに生きてる感じがとても面白い(笑)。ていうか、あなたが事態をややこしくしてるんですよプール!! 上手いことやってその場を切り抜けてるように見えて、どんどんジキルを深みにはめてるような気がしてならない。替え玉作戦もプールが思いついてジキルに入れ知恵したんじゃないかと思ってしまったくらいですよ。ジキルとハイド、イヴとハイジがめまぐるしく入れ替わるシーンなんて、単純にプールが面白がって二人に交互に薬と解毒薬渡したせいですしね! うん、よくやったプール!(笑) 私もあの場にいたらたぶんやる! 公演パンフに「あなたはどのタイプ?」みたいなキャラ診断がついてまして、試しにやってみたらプールになりました。迷った選択肢のところで別のを選んでみても、最終的にはまたプールになりました。ああそうか、プールに対する妙な親近感はこれか…(笑)。

「ジキル博士とハイド氏」書いたスティーブンソンに謝れ! という気が若干しなくもないですが(笑)、たくさん笑えて面白かったです。たまにはこういう、ただただ笑って後には何も残らないお芝居というのも良いですね。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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