瀬を渡り水の向こうへのナビゲーター   topページ > 2014年01月24日  

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おいでおいでするくまさんに誘われて。

2014 - 01/24 [Fri] - 00:40

今年の初映画は「ゼロ・グラビティ」でしたが、初観劇は「冬眠する熊に添い寝してごらん」でした。シアターコクーンにて。古川日出男作、蜷川幸雄演出。
ちなみに初劇場鑑賞ホラー映画は「インシディアス・第二章」でした。誰も聞いてませんか、そうですか。いやでも面白かったんですよ、前作の直後のお話で、前作から続く伏線がきれいに回収されてて。「前回今回で起きた怪奇現象の半分はお前の仕業だったのか!」とか「わあ、ばあちゃんが実はばあちゃんじゃなかった!!」とか、色々わかって楽しめます。恐怖度は前回の方が上(顔の赤いおじさん除く)ですが、ストーリーとしては今回の方が上手い気が。パート1を観た人はぜひこれも観るべきですよ!!

それはともかく、熊さんの感想です。例によってネタバレしますよー。

あるところにとても仲の良い兄弟がいました。兄の一くんはライフル競技でオリンピック代表に選ばれている有名人。弟の多根彦くんは若くして出世街道をひた走るエリート商社マン。けれど、一くんが多根彦くんの婚約者のひばりちゃんを横取りしてしまったものだからさあ大変。家訓である「男子、二十五歳にして、一子をもうけるべし」を守るために、ベビーカーを押す練習までしていた多根彦くん。お兄ちゃんのことは大好き、でもどうしても許せない。「死んでしまえばいい。勿論僕がですけど」と七回も自殺未遂を繰り返すけど、なぜだかどうしても死ねない。運命が彼を死なせない。しかも彼はエリート商社マン、だから会社を休めない。寝ずに働き、一度に幾つものプロジェクトを成功させ、八面六臂どころか千手観音並みに大活躍しながら、彼の精神はもうどうしようもないところまで追い詰められていくのでした。
一方、ひばりちゃんにはひばりちゃんの事情があるようで。詩人である彼女。三歳の時に母親に捨てられた彼女。髪の四分の一がなぜだか金髪の、まるで雑種犬のような毛並みの彼女。彼女は常に犬の気配を感じていました。彼女が結ばれてはならない相手と結ばれたとき、その目に映るのは犬の記憶。それこそ彼女自身のルーツなのでした。
さらに一方、一くんと多根彦くんの高祖父は、伝説の熊猟師。かつて山の中で熊の母子に出会い、そのときに何かしらの契りを交わしたらしい。彼は近代化の波に巻き込まれ、その銃の腕を見込まれてとある人物の暗殺を請け負うことに。
伝説の熊猟師と、その末裔の兄弟と、犬の血を引いているのかもしれない女。神出鬼没な富山の薬売り。石油村の陰謀。戦争。犬は女を犯し、熊はおいでおいでをし、大仏の首はくるりとまわれば巨大な犬の顔に。犬仏の見守る中、時空を超えて交差する運命。はたして契りとは何だったのか。そして多根彦くんの狂気がたどり着く場所は…?

…ええと。実は私、蜷川さんの舞台があまり得意ではなくてですね。今回は、一役の井上芳雄くんとひばり役の鈴木杏ちゃんと伝説の熊猟師な勝村政信さんが観たくてチケットとったようなものだったのです。で、友人が多根彦役の上田竜也くんのファンだったので、彼女の分もチケット取って。
並びの席がとれなかったもので、休憩時間に落ち合って、まずは確認。「大丈夫? ついていけてる?」「…駄目かもしれない」

たぶんこのお芝居、一度観ただけではわからないのだと思います。膨大な量の台詞、噛み合わない会話、行きつ戻りつする時間、ちりばめられたメタファー。
でもあの、もしかしてこれ、そもそも舞台に向かないお話だったのでは…蜷川さんが相当苦労されたそうで、台本が上がってきたときに「どうしよう」と頭を抱えたそうですけど。公演パンフに「作者の古川さんが本読みをしたときにト書きに一番熱が入ってた」と書いてありまして、その時点でやっぱり舞台作品にしちゃ駄目なんじゃないかなと思ってしまったのです私。これは私の個人的な意見なのですが、映像とも小説とも違う舞台の強みって、やっぱりそこに生身の役者さんがいることだと思うんです。雰囲気とか空気とか舞台ならではの仕掛けを楽しんだりも勿論しますけど、でもやっぱり私は役者さんの芝居を観たい。生で語られる台詞、表情、涙、汗、それらによって紡がれていく物語を観たいのです。でもこのお芝居では、その一番力の入ったト書きの一部を舞台上に映し出してまでお客さんに見せようとする。シーンによってはそれがないと確かにわからないんですけど、それを見せないとわからないならもうそれは舞台としての限界を超えてしまってると思うのです。それに、回転寿司のシーンなんかでは、ト書きはむしろいらなかったのではないかなという気が。一とひばりが偶然隣り合って座り、そして魅かれあっていくあのシーン。あれ、とっても良いシーンじゃないですか。なのに、大量の文字が背景に映し出されちゃうと、どうしても気になってそっちを見てしまって、役者さんの演技が見られない…「ト書きがすごいからお客さんにも見えるように映しちゃえ!」って、そういう問題じゃないんじゃないかなーと…ごめんなさい。単に私の好みの問題なんですけど。小説を読むのであれば地の文を重視したい派なんですが、舞台で物理的にト書きを見せられてもちょっと困ってしまうのです。
とはいえ、それでも、四時間近いこの作品を途中で飽きることもなく観ることができたのは、蜷川さんが作ったからなんだろうなとも思いました。ていうか他の人だったらそもそも舞台作品に仕上げること自体が無理でしょうこれ。いや、本当にすごい話なんです。他所ではちょっと観られないタイプの舞台だろうし、これを劇場で観られたというのは実はとても幸運なことなのかもしれません。うん、もう一度観たいかという話は置いておいて、すごいものを観たという気は確かにする。

で、私にとって一番大切な役者さんの演技はといいますと、とても素晴らしかったです。
冒頭、一と多根彦が大変な仲良しぶりを見せつけてくれるシーンはたくさん笑わせていただきました。というか多根彦くん、なぜそうも執拗に一のズボンを下ろすのか…そしてズボンが膝に絡まったままの状態でずいずい一が歩くものだから「上げて上げて!」と多根彦の方が動揺するという(笑)。上田くんは何度かドラマで見たことがあるくらいだったんですが、さすがジャニーズ、綺麗なお顔ですねー。前半の無茶苦茶可愛らしい感じ(可愛すぎてエリート商社マンだということを忘れそうになるくらいでしたが)と、後半のとんでもない狂いっぷりの落差が激しい! 狂気に落ちた多根彦の表情も話し方も、ちょっと忘れがたいくらいすごかった。「汽笛ぃ!」の声が耳から離れませんよ。お顔の綺麗な方が狂うと余計に怖いですね。でも、思いのほか彼の出番は少なかった…あれ、もっと出ると思ったから友人誘ったのに…。
そして井上くん演じる一。多根彦曰く「情熱が少し過剰」な人。イメージは松岡修造さんらしいですが、確かに熱かった!(笑) ちょっと微妙な英語を交えつつ喋る喋る、膨大な量の台詞をがーっとまくしたてる! ひばりとのキスも情熱的! ベッドシーンにはちょっとびっくりしましたが、なにしろ二階席の一番後ろから観てたので細部まではわからず(笑)。とりあえず腕も脚も滅茶苦茶細いことと、腹は割れてないということだけはわかりました。うん、まあ、ライフル射撃のアスリートなら腹筋は要らんのかもしれん…。
多根彦と一の電話のシーンが、すごく好きです。もうすっかりおかしくなってしまった多根彦と、戸惑いながらも最初は普通に話す一。「ハローゥ…」「ハロー!!」と呼びかけあっても気持ちはどこまでも遠く、もう二度と近づくことはない。途方に暮れたように笑う一と、げたげたと笑う多根彦。そして、多根彦の謀略に追い詰められ、絶望に染まる一の顔。いい表情だったなああれ。たぶん一は多根彦以上に難しい役だと思いますし、見ようによっては悪い人でもあるのでしょうが(一がひばりちゃんとらなければ、そもそもこんなことにはならなかったわけですし)、井上くんが演じると「ああこの人、こういう人なんだからしょうがない」という感じがすごくして憎めなくて、ラストは可哀想で仕方がなくなりましたよ。
鈴木杏ちゃんは、ものすごい存在感でしたね! 子役のころから知ってる女優さんがすっかり大人の女になってるのを見ると、いつもなんだか不思議な感じがします。四分の一が金髪の髪や真っ赤な衣装、奔放な振る舞いがまるで魔女のようでしたが、彼女もまた運命に翻弄される身で。詩の朗読のシーンが特に素晴らしい! ああ、本当にいい女優さんになって…年末には浦井健治くんとの二人芝居があるとのことで、とても楽しみです。絶対観る!
勝村政信さんは、いつどこで見ても勝村さんで、とても安心します(笑)。私の中では割と渡辺いっけいさんとかと近いポジションの方です。この人が出てると、ドラマでも舞台でもなんだか安心する。上手いし声もいいし面白いし、大好きな役者さんです。
ひばりちゃんのおばあちゃん役の立石涼子さんといい、富山の薬売りの石井愃一さんといい、さすが芸達者な方が多い舞台でした。犬や熊の着ぐるみを着て獣になりきってる役者さんもいて、これがまた結構動きがリアル…でも犬がいきなりすっくと二足立ちすると、なんか妙に怖い(笑)。

まだ頭の中が混乱したままで正直よくわかってない部分が多すぎるのですが、まあでも、とにかくすごい舞台でした。今週末はミュージカル「シャーロック・ホームズ」を観る予定なので、そちらはもっと素直に楽しみたいと思います(笑)。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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