瀬を渡り水の向こうへのナビゲーター   topページ > 2013年12月19日  

スポンサーサイト

-- - --/-- [--] - --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

船に乗れ。

2013 - 12/19 [Thu] - 01:15

といっても別に、本物の船ではなく。

ええと、先週末は劇場版「SPEC」を観たり、シアターオーブで「船に乗れ!」を観たりしてました。「SPEC」は連ドラのときから大好きで、その前の「ケイゾク」からのファンとしてはこれもーどーなっちゃうのかと思いながら「爻ノ篇」を観に行ったのですが、割と本気で泣いてきてしまいましたよ。賛否両論あるラストなんじゃないかなという気もしましたが、私はあの話はあれで良いと思う…瀬文さんと当麻の関係性が本当に好きだったので。決してハッピーではないけれど、うん、でも大好きです。

そして「船に乗れ!」。
こちらも良かったです。ミュージカルではなく交響劇なのだそうで。クラッシックの名曲に日本語で歌詞をつけて歌っていて、耳になじみのあるメロディーが幾つも出てきました。「白鳥の湖」にのせてどんどん歌声が高まっていったりするところでは、聴いていてちょっと鳥肌立つくらいどきどきしてしまいましたよ。
というわけで、感想です。例によってネタバレしますよー。

2010年の冬。45歳の津島サトルが、修理の終わったチェロを受け取って帰ってきたところから物語は始まります。そのチェロは、彼がもう30年も触れずにいたもの。そして彼は高校時代を振り返ります。
30年前、1980年の春。芸大付属高校を受験して落ちたサトルは、彼の祖父が理事長を務める新生学園の音楽科へ進学することになりました。新生学園は、音楽学校としては三流。でも、友達もできたし、ピアノの先生は美人だし、倫理の授業は面白いし、可愛い女の子もいるし、サトルより上手くチェロを弾ける生徒はいない。サトルは高校生活を満喫していきます。けれど、サトルのドイツ留学をきっかけとして、恋人の枝里子との仲がおかしなことに。サトルの家は裕福で、枝里子の家はただのお蕎麦屋さん。枝里子には留学なんてできません。でも枝里子にだってプライドがあるのです。サトルよりも自分の方が音楽の才能があると信じてる。サトルはサトルで、留学したらきっと難しい名曲をたくさん勉強できると思っていたのに、待っていたのはひたすら音階を繰り返すことと、退屈なヴィヴァルディの曲の練習だけ。日本にいる枝里子から届く手紙もなんだか様子がおかしい。そして、帰国したサトルを待っていたのは、衝撃的な事実。なんとサトルがいない間に枝里子が妊娠していたのです。恋人との別れ、絶望、それでも続く日常、授業、音楽。やがてサトルは、自分が芸術家ではないことに気づいてしまいます。ならばチェロはもうやめよう。高校までで終わりにしよう。サトルはそう決心するのでした――……。

音楽学校のお話です。きらきら輝くような青春と、そして挫折の物語です。
舞台がちょっと面白い作りになっていました。斜めに立体交差した二本の通路が舞台上に作ってあって、通路の間に挟まるようにしてオーケストラがいて。
45歳のサトルを演じたのは、福井晶一さん。高校生のサトルを演じたのは、山崎育三郎くん。ああ、レミゼのバルジャンとマリウスが同一人物を演じている(笑)。それにしても福井さん、本当にいいお声…公演パンフのチェロを女性を抱くように抱いてるお写真がとっても素敵でした。45歳のサトルは、物語の語り手。若い役者さん達が高校時代を演じているのを、あるときは立ったまま、あるときは椅子に座って見つめている。またこの福井さんの視線が素敵なんですよね…楽しかった思い出のシーンを見つめるときの優しく懐かしそうな目、思い出したくないようなシーンを見つめるときの苦悩の視線。二幕は割とずっと舞台上に福井さんがいてじっと目の前の芝居を見つめているので、つい福井さんの方にもちらちらと目を向けてしまいました。ああでも、一幕で、高校生のサトルが初めて枝里子の家を訪れるシーンで、福井さんが後ろからそーっと育三郎くんの腕にレコードを挟むのはなんだか妙に面白かったです(笑)。

そして育三郎くん。高校生役に全く違和感がないのは舞台マジックなのかそれともまだまだお若いからなのか…でも、あの、一つだけものすごく気になったことがありまして。なんだか彼だけブレザーが短くなかったですか? 他の人達に比べて、「あれ?」と違和感を覚えるほどに…いや、いいんですけど別に。
育三郎くんの声も、すごく好きです。艶があって、聴いていて心地いい。お芝居も、サトル役がすごく似合ってた気がします。入学したての頃のちょっと自分に陶酔してる感じとか、枝里子に恋した瞬間のきらきら感(歌いながらくるくる回ったり、たーっと通路を駆け上がったりしてましたね)とか、本当に高校生っぽかったです。枝里子が拗ねてすたすた歩いてったときに、サトルが後ろから声かけながら追いかけるシーンとかも、素なのかと思うくらい自然で。あと、「大人の女!」な雰囲気満々なピアノの先生が気になって目一杯挙動不審になるピアノレッスンシーンがとてもおかしかったです(笑)。「津島くん…津島くん? ええと、ちょっと落ち着いて座ろうか! ていうか座ってないし!」と先生がツッコむくらい、弾きながら腰が浮いている高校生サトル(笑)。そーかー、思春期の男の子って、女の人の腕に生えた透明な産毛まで気になるもんなんですかー…。倫理の先生のお家に遊びに行ったときに部屋の散らかりようにちょっとひくシーンでは、オールナイトニッポンで「汚い部屋で料理を食べたくないです」ときっぱり言っていたのをちょっと思い出してしまいました(笑)。
なにしろ高校生活三年間を演じているので、サトルという役はなかなか振れ幅が大きく、結構難しい役なんじゃないかなという気がします。友達や恋人ときゃっきゃしてたかと思えば、その恋人の妊娠と退学に絶望して授業中に「なぜ人を殺してはいけないんですか」と教師に尋ねたりして。この倫理の授業のシーンの育三郎くんの目は本当に怖かった…そしてその後の、倫理の先生を学校から結果的に追い出すことになるあの台詞を言うシーン。台詞の言い方がまた、「これを言ったらきっと問題になる」ということがわかっていながら言ってる感じがリアルで…誰かを傷つけずにはいられないくらい心が荒れてるのがすごくよくわかる感じで。福井さん演じる大人のサトルが「やめろ!」と横で叫ぶのがまた辛い。チェロをやめると決めた後、それを伝えに倫理の先生の家を訪ねるシーンも辛かった…「才能がないからやめるんです」と口に出して言うのって、本当に辛いと思うのです。
音楽もののお話というとやっぱり思い出されるのは「のだめカンタービレ」なんですが、明確に挫折を描いているこの「船に乗れ!」は、観劇後の感想はどうしてもすっきりとはいきません。それでも、ラストに歌われる「鳥の歌」の歌詞がしみじみと心にきて、しんみりしたまま劇場を出ましたよ。

他のキャストの方々も素晴らしかったです。サトルの同級生の伊藤慧を演じた平方元基くんは、とても繊細な役どころ。フルート吹きで、周りからは貴公子と呼ばれていて、音楽が大好きで、「音楽が始まると僕は音楽になる」と歌う彼。夏合宿の私服姿のときに「わあ、スタイルいい…」と惚れ惚れしました。平方くんも高校生役にまだ全然違和感がないですね。サトルが伊藤に「チェロをやめる」と伝えるシーンでは、ちょっと大事な演奏の前にそんなお知らせして大丈夫なの!?と思ったんですが、その後に伊藤からサトルへさらにびっくりなお知らせがきて仰天しましたよ!! わああ伊藤くんたらそういう人でしたか! 「サトルくん」の言い方がまたなんかこう本当っぽくてすごい…こういう繊細なお芝居上手いですよね平方くん。ていうかそんな伊藤くんの告白を「歪んでるんでも何でもいいからとにかくお前は弾けよ!」と力技で流すサトルはちょっとひどくないでしょうか…いや、だからそもそも演奏前に何でそんな重大発表し合ってるんですかあんたらは! その後の演奏大丈夫なんですかそんな顔して!
枝里子役の小川真奈ちゃんもとっても可愛い人だったんですが、女子キャストの中ではやっぱり増田有華ちゃんが目をひきましたね! はきはきしてて元気で、ちょっとおせっかいなサトルのクラスメート役。勿論顔も可愛いんですが、お芝居がすごくよかったです。サトルが「なぜ人を殺してはいけないんですか」と授業中に言うシーンで、彼女が演じる鮎川はちょうどサトルの前の席に座ってるんですが、枝里子が妊娠するきっかけを作ってしまった鮎川にはサトルがそんなことを言い出した事情が分かっている分、たぶんその場の誰より辛い立場なんです。だからこのシーンの彼女は、台詞はなくても、サトルが言葉を重ねるうちにどんどんうつむき、涙を何度も拭うんです。思わず「ちょっとサトル、気持ちはわかるけどそれ今言うのやめてあげて!」と言いたくなるくらい、ここの鮎川は可哀想でした。
サトルが憧れるピアノの教師の佐藤先生は、田中麗奈さん。おお、美しい…そして女性らしい。サトルがどきどきするのも無理はないと思えるくらい、本当に大人の女の雰囲気が全身から漂ってました。枝里子のお母さん役の木の実ナナさんはさすがの存在感…カーテンコールでエスコートしてくれた平方くんの手をその後しばらく握って離さない様がなんだか愉快でしたが(笑)。合田先輩役の石井一彰くんは、私の中ではいまだにマーキューシオのイメージが強いんですが(その前に「太平洋序曲」とかでも観てるはずなんですけど)、本当にびっくりするくらい顔小さい人ですよね! 眼鏡男子な合田先輩、ちょっと損な役回りのような気もしましたが、私は石井くんの声も好き…なんだか響き方がセクシーなんですよね。石井くんは来年の「シャーロック・ホームズ」でも観られるのでとても楽しみです。

そして今週末は「モンテ・クリスト伯」を観る予定。こちらもとても楽しみです。

スポンサーサイト

 | ホーム | 

プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

カレンダー

11 | 2013/12 | 01
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

カウンター

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

リンク

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。