瀬を渡り水の向こうへのナビゲーター   topページ > 2012年03月15日  

ヒューゴ。

2012 - 03/15 [Thu] - 01:21

小話その2の前に、とりあえず忘れないうちにこっちも書いておこうかと。主に自分のために。
というわけで、『ヒューゴの不思議な発明』の感想なのです。例によってネタバレしますので、「これから観るけど、事前情報は要らん!」という方はスルーしてくださいませ。

私、あんまり事前情報を入れずに観に行ったのですが、この映画って、ファンタジー映画ではなかったのですね。CMの感じからなんとなーく、「ハリー・ポッター」とか「スパイダーウィックの謎」みたいな映画かと思っていたのですが、全くそんなことはなく。映像はとてもファンタジックで美しいのですが、そこに描かれていたのは人間のドラマと、何より映画への愛でした。

父親を亡くして駅の時計台に隠れ住んでいるヒューゴは、父親の形見の機械人形を修理するために、どうやらこっそりネジやらバネやらを集めているようなのです。主な調達先は、駅の中にある小さなおもちゃ屋さん。もちろんお金なんて持っていないヒューゴは、店主のおじいちゃんの目を盗んで、ネズミのおもちゃやら何やらを盗っていこうとするのですが、ある日とうとう見つかって捕まってしまいます。「ポケットの中身を出せ」と言われ、機械人形のことが書かれた手帳をヒューゴが出すと、中身を見たおじいちゃんの顔色が変わる。「亡霊だ」そう呟いて、おじいちゃんはヒューゴから手帳を取り上げてしまいます。「これは家に帰って燃やす」と。
手帳を取り返すために、ヒューゴはおじいちゃんの家まで追いかけていきます。そして、おじいちゃんの養女であるイザベルと出会うのです。
イザベルが持っていたハート形の鍵がついに機械人形を動かしたとき、物語もまたもう一段階動き始めます。機械人形が描き出したのは、かつてヒューゴの父親が初めて観た映画のワンシーン。そして、そのイラストの下に機械人形が記したサインは、「ジョルジュ・メリエス」。それは、あのおもちゃ屋のおじいちゃんの名前だったのです…。

もう、このおじいちゃんが。ベン・キングズレー演じるパパ・ジョルジュが。本当にねえ、たまらないのですよ。
ジョルジュは、最初はとてつもない偏屈爺として登場します。こんな怖い顔のじいちゃんがおもちゃ屋の店先に座ってても誰も買いませんよ、というくらいのしかめっ面で。ところが、実はこのおじいちゃんがかつては有名な映画監督だったというのです。元手品師で、リュミエール兄弟が撮った『ラ・シオタ駅への列車の到着』を観て映画に惚れ込んで、話作りから監督、効果、果ては役者まで自分でこなして、それはもう楽しそうに映画を作っていたのです。
スタジオを見学に来た子供に、ジョルジュがこう言うシーンがあります。「夢はどこから生まれるか知ってるかい? ここで作られているのさ」と。そのときのジョルジュの笑顔の、なんと輝かしいことか。誰もが彼の作る夢のような映画を愛し、そして誰よりもジョルジュ自身が映画を愛していたのです。

けれど、やがて戦争が起き、戦場で無残な現実を山ほど見てきた若者達の心には、ジョルジュの作る夢の映画はまるで響かなくなる。ジョルジュの映画会社は倒産し、美しいガラスの宮殿のようなスタジオは荒れ果てて、ジョルジュは舞台セットもフィルムも自ら燃やし、小さなおもちゃ屋を始めます。でも、おもちゃ屋の店先に座る彼の顔は硬く強張り、そこにはかつての輝きはかけらもない。誰より映画を愛した彼は映画に絶望し、すべての夢を手放してしまったのです。
この辺りのシーンが、本当にたまらなくて。思わず本気で泣いてしまったのですが、何しろ3Dメガネ着用中。涙が拭けないという事態に陥り、あわあわ慌てる私。早くメガネなしで観られる3Dを開発してください…。

タイトルは『ヒューゴの不思議な発明』なのですが、ヒューゴくんはあまり発明はしません。基本、修理担当。駅の時計のネジを巻き、壊れたおもちゃを直し、壊れた機械人形を直し、そして最後にはジョルジュの心をも修理する。いらないネジなんてないのです。誰もが役割を持っている。ヒューゴはそれを全力で証明しようとし、そして彼の努力は報われます。このシーンも泣けたなあ…。

ヒューゴやイザベル、ジョルジュを取り巻く「駅の人々」もまた色々素敵でした。悪役的に登場する鉄道保安官は可愛い花屋の娘さんに切ない恋心を見せ、保安官を応援するカフェのおばあちゃんに恋するおじいちゃんもいたりして。そして駅内の本屋さんの店主はなんとクリストファー・リー! なにげに豪華なキャストでしたね。ヒューゴのお父さんはジュード・ロウでしたし。イザベルを演じてたクロエちゃんは『キック・アス』や『モールス』に出てた子で。

映像も本当に素晴らしかったです。駅の高い時計台から見下ろしたパリの街の美しさ、たくさんの歯車が回るまるで秘密基地みたいな時計台の内部、そして3Dで舞う雪。綺麗なものが見たくて観に行った映画だったのですが、劇場で観て本当に良かったと思います。あと、機械人形くんの若干不気味な姿形がまた大変私の好みだったりして(笑)。

もしまだご覧になっていない方は、できれば劇場でどうぞ。かつて初めて映画を観た人々の驚きを、今、最新の映像技術で感じるチャンスですよ。

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プロフィール

水瀬桂子

Author:水瀬桂子
水瀬桂子。
1月21日生まれ。水瓶座のO型。
趣味は観劇、映画鑑賞、読書。旅に出るのも好きです。
おいしいものを食べて、素敵な物語に接していられれば、この上なく幸せです。
三笠書房f-Clan文庫さんより、『妓楼には鍵の姫が住まう-死人視の男-』『妓楼には鍵の姫が住まう-黄泉がえりの人形-』が発売中です。

なお、「水瀬桂子」は「渡瀬桂子」と同一人物です。渡瀬桂子名義の近刊に『少年魔法人形 キスからはじまる契約魔法』『ある日、月の夜に。-わがままな魔女と人狼の騎士-』(ともに一迅社文庫アイリスさんより)があります。水瀬名義は、f-Clan文庫さんが初めてです。こちらは、より趣味っぽい感じのもの用になりそうな予感…。

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